今後のインフレを考える どういうインフレが問題なのか?
Japan In-depth / 2023年3月3日 18時0分
5%や6%のインフレでは、先行きのインフレが制御できるかどうか確信が持てないので、もっと低いインフレが実現するまで金利は引き上げなければならないとしよう。では、足元のインフレがどこまで下がれば安心できるのか。現在、米国で起こっているのは、モノのインフレは収まってきてはいるが、賃金の影響をより強く受けるサービスのインフレ圧力はなお強いということだ。煎じ詰めれば、労働需給がタイト過ぎるので安心できないという話になる。
2%のインフレ目標は世界標準と言うが、だからと言って2%インフレが実現するまで金融引き締めを続けて、失業率が高くなり過ぎては、一体、何のための金融政策かということになる。コロナ禍が終わり、米中対立がより先鋭化し、ロシアがウクライナに侵攻しているという、これまでとは様変わりの状況において、足元のインフレ率が何%まで低下すれば、先行きのインフレが制御できると考えられるのか。難しい問い掛けだ。
一方で、人口動態や働き方の変化を織り込んで、タイト過ぎず、ルース過ぎない失業率、即ち自然失業率が、現在、何%なのかということについては、それよりはもう少し考えるヒントがある気がする。
■ 日本への含意
翻って、日本の状況をみると、モノのインフレはまだピークアウトしておらず、それが消費者物価を押し上げている。これまでの輸入インフレは、なお完全には国内価格に転嫁されておらず、それは企業の収益を圧迫しているはずだ。しかし、コロナ禍対応の財政支出や、ポスト・コロナの経済活動の正常化の中で、その影響は深刻には出ていないようだ。
モノのインフレがサービスに波及するかどうかは、まさにこれからであり、だからこそ今春の賃上げが注目されている。日本社会の慣行からすると、どうしても賃金の上昇はインフレに遅行する。したがって、賃金の上昇を受けたサービスのインフレも、これから起こる。それでも、日本銀行の政策委員による現在の見通しでは、2023年度を通してみると2%インフレは実現しない。
しかし、1年前には現在ほどのインフレは見通せていなかった。来年の今頃どうなっているかは、世界経済の大きな環境変化を思えば、まさに不確実だ。そもそも、1月の日本の消費者物価指数の前年比は+4.2%と、41年振りの上昇となっている。もう長いこと経験のしたことのないインフレの中で、どのような価格設定が実現するかはっきりしない。2%のインフレが定着するかもしれないし、あるいは2%近辺ではうまく制御できないかもしれない。
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