今後のインフレを考える どういうインフレが問題なのか?
Japan In-depth / 2023年3月3日 18時0分
仮に、2%インフレが安定的に実現したとしても、それによってどういう良いことが起こるのだろうか。安定的な成長を実現するための2%インフレであったはずだが、海外要因でのインフレが、賃金上昇を通じて国内要因でのインフレになり、それがどのようにしてより高い成長に結び付くのか。その道筋は必ずしもはっきりしていない。
不透明なことばかりだが、米国で今起こっていることから学ぶとすれば、労働市場の状況が重要になるのではないか。今春のベアの後に、労働市場が過熱状態に入るのか、まだ供給に余裕があるとみなせるのかの判断が焦点になりそうだ。つまり、自然失業率が安定的に達成されるかどうかだ。
そこで考慮する必要があるのは、経済全体として生産性をもっと高めたいのであれば、労働力をより生産性の高い分野へとシフトさせなくてはいけないので、その分、摩擦的失業は増えるということだ。それを織り込んだこれからの自然失業率をどうみるかは、決して簡単な問題ではない。
しかし、単に機械的にインフレ率だけをみて金融政策を行うより、そうした点のチェックもしたほうが、元々、実現したかった良い経済状況に近づけるのではないだろうか。そもそも、世界標準だという2%インフレは、コロナ禍前、米中対立の先鋭化前、ロシアのウクライナ侵攻前の標準だ。これからの世界経済の環境にあっても、その標準をできるだけ早く実現することが、マクロ経済にとって最も良い選択であるかどうか。それ自体も不透明なのである。
トップ写真:ワシントンD.C.で講演するパウエルFRB議長。0.25%の金利上昇を 4.50%から4.75%の範囲にすると発表した(2023年2月7日)出典:Photo by Julia Nikhinson/Getty Images
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