在台米軍人数の拡大と北京の戦争準備
Japan In-depth / 2023年3月3日 23時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・今後数か月に米国は台湾軍の訓練プログラム強化のため、部隊の駐留数を大幅に増加させる。
・米国の役割拡大は、中・露を牽制できる面と、中台関係の『レッドライン』となる面がある。
・中国は戦時体制への備えを進めているが、ジェスチャーに過ぎないのではないかとの見方も。
最近の『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道によれば、米国は今後数ヶ月の間に、台湾に100人から200人の軍隊を配備する予定(a)だという。ワシントンは、中国から台湾への脅威が高まる中、台湾軍の訓練プログラムを強化するため、同島における部隊の駐留数を現在(約30人)の4倍以上に大幅に増加させる。
また、米軍は台湾での訓練に加え、ミシガン州兵が数ヶ国との年次演習の際、ミシガン州北部のキャンプ・グレイリングなどで台湾人部隊の訓練も行う。
米政府関係者によると、台湾駐留軍の数を拡大する計画は数ヶ月前から進められており、2月以降の「中国偵察気球」騒動で米中関係がさらに悪化する前からその調整が始まっていたという。
近年、人民解放軍は台湾に軍用機や艦船を接近させ、侵攻型の演習を行うことが多くなってきた。昨年、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米国防総省は台湾に対し、「ヤマアラシ」戦略と呼ばれる、台湾攻略を困難にする戦術や兵器体系を採用するよう働きかけている。
実は、2021年、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、それまで公開されていなかった米小規模軍事特攻隊による台湾軍訓練を初めて報道した。当時、北京は台湾に対し自らの権益を保護する措置を取ると中国外交部が明言したが、具体的にどのような措置を取るかは明らかにしなかった。
軍事専門家の中には、「米国の大胆な行動だけが習近平主席の計算を狂わせ、自信を揺るがすので、米軍は台湾に少なくとも1500人の部隊の駐留をすべきだ」と主張する者さえいる(b)。
また、ランド研究所の政治学者、郭泓均は、台湾における米軍のプレゼンスが拡大することは、米国が台湾軍を訓練する機会を増やし、ロシアと戦うウクライナの兵士を支援する上でも非常に有効である、と分析した。
だが、郭泓均は、ワシントンが台湾への米軍人の派遣を拡大し、北京が台湾における外国軍人の存在を中台開戦の「レッドライン」と見なす危険性を懸念している。
他方、米国の政治学者、Ian M. Easton(易思安)は「中国共産党のいう『レッドライン』については、国際法上、何の根拠もない。『レッドライン』を主張する北京を過大評価することが、ワシントンにとって一番好ましくない」と考えている。
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