大学の引きこもり・研究室不登校生への取り組み
Japan In-depth / 2023年3月17日 11時0分
根岸和政(公認心理師)
【まとめ】
・大阪大学大学院工学研究科は引きこもりおよび研究室不登校生向けに復学支援室を開設。
・利用学生の9割は修学、卒業、進学、転学に至っている。
・引きこもりや研究室不登校の学生については、孤立無援感の払拭および大学との距離が遠ざからないことが重要である。
・最終的に中退することになっても、大阪大学工学研究科に来て良かったという思いを残してほしい。
私は、大阪大学大学院工学研究科で専任相談員をしている。大阪大学大学院工学研究科における、引きこもりおよび研究室不登校生への取り組みについて、紹介したい。
そもそも人間の行動は、すべて感情によって決定づけられる。その感情は、自分の期待、願望、欲求の満足度によって規定される。引きこもり・研究室不登校という行動も例外ではない。きっかけはそれぞれではあるが、各自の「体験から湧き起るネガティブな感情」によって決定づけられる。
代表的なものが、挫折感、恐怖感、不安感だ。何かしらの期待や希望、願望が満たされなかった時、これらネガティブな感情が表出し、結果として引きこもり・研究室不登校という行動に移行していると考えられる。
さらに時間の経過とともに、挫折感、恐怖感、不安感に加えて、焦燥感、将来に対する絶望感も表出してくる。これらの感情を感じなくするために、ゲームや飲酒等に身を委ね、苦痛を和らげようとするケースもある。
ネガティブな感情に苛まれている場合、一人で解決を試みても、さらにネガティブなスパイラルに陥ることがほとんどである。そのため相談窓口が必須となる。担当するのは、一般的に精神科医、臨床心理士、公認心理師の他、学生対応の経験豊富な教員の方々である。
私は相談員としての経験から、引きこもりや研究室不登校の学生については、孤立無援感の払拭および大学との距離が遠ざからないことが重要であると考えていた。そこで、どうせ引きこもるなら学内で引きこもってもらうことを考え、工学研究科内における「引きこもり部屋」の必要性を提案した。
こうして2017年に開設されたのが、レジリエンス・サポートルーム(復学支援室)だ。
レジリエンス・サポートルームは、一人あたりの占有面積を4㎡として17名が利用できる面積を確保している。コロナ禍にある現在は、利用人数を8名に限定している。月~金、午前10:00〜17:00を利用時間としている。利用学生が自分のペースで過ごすことができるよう、安全・安心を確保するための環境整備にも注力している。
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