バイデン大統領をどう評価するか その2 中国に軍事攻勢を許した
Japan In-depth / 2023年3月18日 11時2分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・第二のバイデン大統領の対外政策の特徴はアフガニスタンの完全な喪失。
・第三にはバイデン政権下で中国の野心的な攻勢がより露骨となった。
・第四はバイデン政権の北朝鮮とイランに対する姿勢の明白な後退。
さてこの連載の前回「その1」ではアメリカのバイデン大統領の対外政策の評価として第一にロシアのウクライナ軍事侵攻による戦争が起きることを許容した点を挙げた。今回はさらにバイデン大統領の外交面の軌跡を追うこととする。
第二のバイデン大統領の対外政策の特徴はアフガニスタンの完全な喪失である。
アメリカは2001年の9・11同時多発テロ直後からその実行組織のアルカーイダを保護してきたアフガニスタンのタリバン政権を糾弾した。そしてタリバンに宣戦して、首都カブールから撃退し、民主化を進めてきた。2代目ブッシュ政権によるこの平定作戦はその後のオバマ政権、トランプ政権と、20年ほども続いてきた。
トランプ政権はこのアフガン民主化をやがては止める方針を固め、アフガン駐在の米軍の撤退を計画しながらも、なお米軍の一部を長期に残留させ、タリバン抑止の戦略を保っていた。だがバイデン大統領は就任から半年後の2021年8月、唐突に米軍を全面撤退させ、アフガニスタンでの民主的政権の崩壊とタリバン政権の復活をすぐに許してしまった。
その過程ではバイデン大統領自身が現地情勢について錯誤の発言を繰り返し、アフガン、アメリカ両側に多数の犠牲を出した。そして長年の民主化活動は一気に瓦解し、アメリカ側陣営にとってのアフガニスタンの完全喪失となった。
第三にはバイデン政権下では中国の野心的な攻勢がより露骨となった。
中国の無法な膨張に初めて正面から対決したのはトランプ政権だった。バイデン政権もその基本を継ごうとはしたが、対中協力をも強調する。なにしろバイデン政権の指導層は大統領自身を始め中国への関与という名の融和政策をとってきたオバマ政権の中枢にいた人物ばかりなのである。
バイデン政権は中国に対して軍事面での対決を避ける姿勢をとった。トランプ政権が中国の抑止として記録破りの増額をした国防予算を事実上の削減にまで抑えてしまった。バイデン大統領は議会からの超党派の圧力で国防費をいくらか増したが、なおトランプ政権の開始した対中防衛強化の「太平洋イニシアティブ」などの経費を大幅に減らした。中国はその後退をつくように台湾などへの軍事攻勢を強めてきた。
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