ボリビアのリチウム開発権獲得 中国影響力増大へ
Japan In-depth / 2023年3月19日 18時0分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・ボリビアのリチウム開発事業の国際入札で中国企業連合が落札。
・ボリビア国内では、アルセ左派政権が天然資源を中国に譲り渡したとの批判あり。
・中国のプラント建設予定地では反対運動も。
■「リチウム資源が中国の管理下に」との見方も
南米のボリビアは世界最大のリチウム資源国である。
米国地質研究所(USGS)のデータによると、ボリビアのリチウム埋蔵量は推定2,100万トンで全世界の4分の1近くを占める。しかし、ボリビア政府の政策、技術的問題、資金不足などから開発が遅れ、同国のリチウム生産量は年間540トン程度にとどまる。生産量世界一のオーストラリアの55,000トンには遠く及ばない。
ボリビア政府はこのほど、同国のリチウム鉱床開発事業をめぐる国際入札で中国の企業連合が落札したと発表した。同企業連合とボリビア・リチウム公社(YLB)との間で具体的な協力協定が締結された。この企業連合は世界最大のEVバッテリーメーカー「寧徳時代新能源科技」(CATL)が率いており、その子会社2社が加わっている。
CATLは、世界的観光地として知られるウユニ塩湖のあるボリビア南西部のポトシ県と、もう一つの塩湖が存在する中西部のオルロ県の2カ所で直接リチウム抽出(DLE)技術を使用した複数のプラントを建設する予定だ。現地メディアの報道によれば、CATLは第1段階で約11億ドルを投じてプラントを立ち上げるとともに道路や電力供給などのインフラ強化、炭酸リチウムの開発と製品化を行うという。
締結された協定ではCATLが炭酸リチウム生産チェーンの所有権を獲得するとされ、「ボリビアのリチウム資源が事実上、中国の管理下に置かれることになり、ボリビア経済全体に対する影響力が増大するだろう」(現地政治アナリスト)との見方も浮上している。
■2年後のリチウム電池輸出が目標
ボリビアは2006年から2019年まで反米左派のエボ・モラレス政権時代、大型の経済支援などによって中国の存在感が増した後、2019年発足のアニェス暫定政権下で親米外交に転じたが、2020年にアルセ現政権が成立、再び親中路線が強まっている。
こうした事情から、中国が今回リチウム開発権を獲得したことについてボリビア国内では「アルセ大統領はわれわれの貴重な天然資源を簡単な契約で中国に譲り渡した」(ボリビア有力紙「エル・ディアリオ」)といった批判の声が上がっている。
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