バイデン大統領をどう評価するか その3 不法入国者の激増
Japan In-depth / 2023年3月20日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・バイデン政権の外交は、既成の国際秩序への破壊者や敵対者を勢いづけた。
・高インフレや不法移民問題など、国内政策でもやはり負の部分が大きい。
・年来の失言、放言の悪癖から、ホワイトハウスは同大統領の自由な発言の機会を極端に抑えている。
以上、バイデン政権の外交をみてきたが、この政権はやはり、対外政策ではアメリカの敵、つまり既成の国際秩序への破壊者や敵対者を勢いづけたという総括となる。その結果、いまの世界はトランプ政権時代よりも不安定、変動要因が多くなったという結論を出さざるをえない。アメリカが国際情勢の舞台では以前よりも指導力や活力を減らしたということになる。
その一方、バイデン政権は国際協調を看板に掲げる。バイデン大統領自身も前述の一般教書演説の外交へのきわめて分量の少ない言及のなかで、ロシアのウクライナ侵略に対する「NATOの結束」や「世界連合の構築」を強調した。
バイデン政権は実際に日本も含めて同盟諸国との連携には熱意を注いできたように思える。「自由で開かれたインド太平洋」構想での日本やオーストラリアとの安保協力にも熱心なようだ。この点、年来の同盟の絆を保持しながらも、その同盟の強化に熱心ではない西欧諸国などを容赦なく非難したトランプ政権の態度とは異なっている。
日本側のいわゆる識者の間では、バイデン政権の国際協調を賞賛する向きも少なくない。
ところがバイデン政権の動きの考察で表面から少しでも内部へと踏み込んでみると、風景は異なる。日本側でも大好評の「自由で開かれたインド太平洋」構想は実はトランプ政権の創作だった。しかもこの構想を軍事面で支える米軍の「太平洋イニシアティブ」でもバイデン政権はその中枢部分を削ってしまった。
バイデン政権はトランプ政権が決めていた海上発射核巡航ミサイル(SLCM-N)の開発を昨年秋、中止した。同核巡航ミサイルは潜水艦や海上艦艇に低威力の小型核弾頭を搭載する地域紛争用の戦術・戦域核兵器とされる。ミサイルの飛行距離も短・中距離に限定され、まさに中国軍に対する低次元での核抑止を目的とし、「太平洋イニシアティブ」の中枢だった。
バイデン政権の対外政策ではこの種の軍事忌避があちこちで目立つのである。そしてアメリカの敵といえるロシア、中国、北朝鮮などがこの米側の軍事軟化につけこんで軍事硬化とも呼べる攻勢に出てきたといえるのだ。
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