大江健三郎氏の自衛隊全廃論はいま
Japan In-depth / 2023年3月21日 21時0分
【ワシントン4月29日=古森義久】ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎氏が28日夜、ワシントンでの講演会で、日本の自衛隊は憲法違反だから全廃しなければならない、という大胆な発言をした。大江氏は日本は自衛隊を完全になくすための道へといますぐ歩み出さねばならないと強調するとともに、アジアの人民に対し戦争の責任を謝罪し、賠償をすべきだとも主張した。米国人聴衆の中からは大江氏の発言に対し「あなたの主張にはまったく同意できない」という正面からの反発も飛び出した。
自書の英訳出版の宣伝などで米国訪問中の大江氏は28日午後8時(日本時間29日午前9時)から、ワシントンのフォルジャー劇場で英訳者のジョン・ネーセン氏との対話という形で講演した。
以上が記事全体の概略だった。このフォルジャー劇場というのはワシントンの連邦議会の議事堂に近い古い地区にある由緒ありげな劇場である。シェークスピアの作品を専門に上演したというイギリスの古い劇場の構造や内装を大幅に採用したというのだ。
さて私の記事は以下のように続いていた。
米国人7割、日本人3割程度の比率の聴衆約100人を前に、ネーセン氏の詳しい紹介のあとに大江氏がゆっくりとした英語で、自分の小説の背景や意図を説明した。
このあとの質疑応答で、米国人青年が「あなたは軍事とか防衛への反対を繰り返し表明しているがなぜか」という問いに応じて、大江氏は「日本のいまの自衛隊は軍隊であり、憲法に違反しているから、全廃しなければならない。私たち日本人は憲法順守という方向へ向けての新たな国づくりをいま始めねばならず、その過程で自衛隊を完全になくさねばならない」と明言した。
大江氏はさらに憲法について「日本の保守派にはこの憲法が米国から押しつけられたものだから改正する必要があるという意見があるが、米国の民主主義を愛する人たちが作った憲法なのだからあくまで擁護すべきだ。軍隊(自衛隊)についても、前文にある『平和を愛する諸国民の公正を信頼して』とあるように、中国や朝鮮半島の人民たちと協力して、自衛隊の全廃を目指さねばならない。終戦から五十周年のいますぐにもそのことに着手すべきだ」とも主張した。
大江氏のこの発言では自衛隊の存在自体が憲法違反であり、悪だというのだ。しかも中国や朝鮮半島の人民と協力して、日本国自衛隊をなくせ、と求めるのである。この発言には日本国という立脚点は感じられない。まるで中国や朝鮮半島の政治組織が日本に対してぶつけている政治圧力となにも変わらない、という感じだった。聴衆のアメリカ人とみうけられる青年から大江氏の意見への正面からの反対が表明されたことには、日本人としてほっとした。
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