バイデン大統領をどう評価するか その5(最終回)機密文書流出事件の行方
Japan In-depth / 2023年3月22日 11時0分
一方の民主党側では、バイデン大統領に対して、つい最近起きた機密文書流出の衝撃波がどのように作用していくか。どうしてもそこで浮かぶのはバイデン政権全体としての混迷とか混乱という言葉となる。こうした現政権の揺れは野党の共和党側の変動と合わせて、当面のアメリカ政治の機能低下をも思わせる。
ただしこの状態がアメリカの完全な分裂だとか、民主主義の終わりだとする日本側の一部での断定は的を外している。この種の混乱や対立はアメリカの二党政治のいわば宿命、あるいは常態なのである。保守とリベラルの対立はいつの時代でもあったのだ。そして保守とリベラルの両陣営内部での混乱も新しい現象ではない。
両陣営のせめぎあいは、いわば振り子の揺れとみる方が正確だろう。民主主義国家アメリカの超大国としての基本の枠組みは健在なのだ。ただし、その政権を握るバイデン大統領の今後2年ほどの統治の質を占うとき、その同じ振り子でも負への傾きが普段よりは激しいということだろう。その種の揺れや傾きは同盟国の日本にも必ず普段とはやや異なる波を送る危険は十分に予想される。
日本側としては当面、アメリカの国政、つまり内政と外交の実態を正確につかみ、そのアメリカの外交面での動きの状況が日本の国益を害さないように、そのための行動と言明をためらわずに発し続けることが望まれよう。
(終わり。その1、その2、その3、その4)
**この記事は月刊雑誌『正論』2023年4月号に載った古森義久氏の論文「国際情勢乱す米国政治の混迷」の転載です。
トップ写真:ナショナル・クリスマスツリー点灯式に参加するハンター・バイデン氏(左)とバイデン大統領(2022年11月30日ワシントンD.C.)出典:Photo by Kevin Dietsch/Getty Images
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