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自給率よりフードロスが問題(上)今こそ「NO政」と決別を その3

Japan In-depth / 2023年3月25日 12時20分

カロリーベースでの食糧自給率が一向に上がらないのは、日本人が肉をたくさん食べ、その食肉において輸入品が占める割合が高いからに過ぎない。





一方、食料もまた商品であるという観点から、価格に着目したのが生産額ベースだが、これで見た場合、わが国の食糧自給率は63%となる。





この数値は英国の61%を上回り、ドイツの64%とほぼ互角。世界最低レベルとまでは言えないのである。





もちろん、かなり低いという事実は動かせないし、だからこそ農水省は、2030年までに食糧自給率を45%に引き上げようという目標を掲げている。





ただ、ひとつ疑問に思うのは、





「米と国産野菜を食べれば、食料自給率は自ずから上がる」





というほど単純な話だろうか、ということだ。この議論を補強する意図なのか、





「1965(昭和40)年には、日本人はカロリーの半分以上を白米から得ていた。2019(4月30日まで平成31、5月より令和元)年には、この数値が半分以下になった」





という指摘もなされている。どちらも農水省の資料から引用した。





とどのつまり農水省が、世界的には一般的でないカロリーベースで計算しつつ、





「わが国の食糧自給率は世界最低レベル」





と標榜していたのは、もっとお米を食べてください、と言いたかっただけなのではないか。





食料もまた商品であるという、経済学の基礎が理解できていなかった、としか思えない。





具体的にどういうことかと言うと、まずは前述の、食糧自給率を割り出す数式を思い起こしていただきたいのだが、輸出と輸入のバランスが変われば自給率の数値も変わる。





米国、カナダ、フランス、オーストラリアなどは自給率100%を超えているが、これらの国々も「なにひとつ輸入していない」わけでは、決してないのだ。





また、酒類は「嗜好品」とされて、食料にカウントされていない。





前に、酒の話題をシリーズで書かせていただいたが、過去数年来、欧米で日本酒の需要が高まり、輸出額は右肩上がりである。加えて国内でも日本酒の消費量が増えれば、必然的に米の消費も増えるのだが、これは食糧自給率に反映されないのだ。





逆に、フランス、イタリア、スペインなどから、いくらワインをたくさん買っても、互いの食糧自給率には、まったく影響しない。





そうであるなら、食料についてもまた、貿易の在り方を見直すことで、農家と消費者、双方の利益を担保しつつ自給率を改善する、ということも、決して夢物語ではない、と私は考える。





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