自給率よりフードロスが問題だ(下)今こそ「NO政」と決別を その4
Japan In-depth / 2023年3月29日 11時0分
一方、国内で屠畜処理される牛は、年間120万頭弱に過ぎない。価格の問題をあえて度外視したとしても、国産牛で牛丼を作れば……という発想が、どうして現実的でないのか、これ以上多くを語るまでもないだろう。
価格は度外視して……と今述べたが、あくまでも「ちなみに」ということで少し付け足させていただくと、国産牛肉を用いた「ステーキ丼」は3000円くらいする例が多い。安い部位を薄切りにして用いても、1000円以下で供するのは難しそうだ。1000円の牛丼に需要があるだろうか。
さらに言えば、牛丼という食べ物は、白米のご飯の上に少しばかりの肉が(吉野屋さん、ごめんなさい)のっているので、カロリーの多くは白米から摂取される。
食材の多くを輸入に頼っているから、ずっと食糧自給率が上がらない、という見方も、まあ一面の真実だとは認められるにせよ、やはり表面的だと言わざるを得ない。
またもや吉野家を引き合いに出すと、かつてはコストを低減するためにと、輸入米を用いたこともあったようだが、今は内外の価格差が解消されてきたとして「100%国産米」を売りにしている。
とどのつまり、食料の輸入を政策的に抑制しようとしたところで、市場の原理がそれを許さないのであり、生産農家と都会の消費者、双方の利益を守りつつ、食糧自給率を改善して行く道は、他にあるのではないだろうか。
ここで、またしても前回の繰り返しになるが、わが国では年間522万トンもの食材や残飯が廃棄されている。これは世界ワースト3(1位中国、2位米国)の数字だ。
これらをリサイクルすれば、具体的には飼料や肥料として利用するシステムを作れれば、農産物の製造コストを軽減でき、輸入食品との価格差を縮小できる。
実際問題として、米や野菜を育てている農家にとっては肥料代が、畜産農家や養鶏業者にとっては飼料代が、きわめて大きな負担となっている。この負担を軽減して行かない限り、日本の農業は、なかなか産業として自立して行けない。
もうひとつ、このようにフードロスとして廃棄される物を飼料や肥料としてリサイクルして行ければ、化学肥料や抗生物質を混ぜた飼料(その全てが危険なわけでもないことは明記しておくが)に置き換え、より安心・安全な食材を得ることにも寄与する。
昨年末、地方の弁当製造業者が、食材の値上げラッシュが続く中、価格転嫁をなんとか抑えようと、それまでお金を払って業者に引き取ってもらっていたフードロスを、近所の農場に引き取ってもらうようにした、という記事を読んだ。
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