週刊誌記者が見た、東大を訴えた青年の素顔
Japan In-depth / 2023年4月7日 23時0分
そもそも、記者会見を主催する記者クラブにも属していない(場合によっては会見にも参加させてもらえない)週刊誌記者なのだから、どうせやるなら、違う角度から攻めたい。そう考え、杉浦さん本人に5~6回ほど独自にお話を聞き、さらに灘高校時代の担任、同級生、部活の顧問、上先生など、彼にとって身近な人々から情報を収集し、杉浦さんの普段の姿を掘り下げていきました。
高校時代の彼を知るある先生は、「口数は少なく、勉強がよくできる子という印象。自ら記者会見を起こすタイプとは思っていなかったので驚いた」と語りました。
灘校出身で、高校時代から医学生の学生団体に所属。現役で東大理Ⅲに合格――。
プロフィールを並べると、実際、杉浦さんは何とも「勝ち組」な人生を歩んできたように見えます。私自身、取材という形で接触することがなければ、「自分とは無縁のキラキラした世界で生きてきた子がいるな」程度に切り離して見ていたかもしれません。
しかし、本人と交流を重ねる中で、そのような経歴は、彼の一面に過ぎないと感じるようになりました。私個人が感じた、肩書からは伺い知れない杉浦さんの魅力。それは簡単に書けば「底知れぬ生命力」にあります。
例えば、先に書いたシンポジウムで本人と名刺交換を行った翌日、杉浦さんからは「御礼」と題するメールが届きました。そこには、自身の講演に足を運んでもらったことへの感謝とともに、「昨日はわずかな時間しかお話しできませんでしたが、またお会いしてお話ししたい」旨が記載されていました。
仕事柄、日々多くの人とお会いする機会がありますが、その多くは名刺交換をしただけで終わります。自分から連絡を入れてきて、さらに会う提案まで持ちかけるとは、グイグイ来る子だなと感じましたが、一方ではその行動力に好印象も持ちました。
また、何度か取材を重ねる中で、裁判とは杉浦さんにとってあくまで最終手段であり、提訴に至るまでの間、様々な手段を使って大学との対話を試みていたことも知りました。自身も出席した東大の入学式辞で、東大の総長が大学の将来を切り拓くキーワードに「対話」を挙げていたことから、自ら総長に直訴する手紙を書いたというエピソードには驚かされました。
大学のホームページ上で非難の文書を出されたり、裁判でも超がつくほどの塩対応を受けたり……。東大からさんざん足蹴にされながら、踏まれても踏まれても強く立ち上がっていく。その姿はまるでぺんぺん草のようで、それまで自分が東大生に抱いていた「スマート」なイメージを良い意味で裏切るものでした。
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