深刻化する東南アジアの煙害
Japan In-depth / 2023年4月19日 11時0分
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・インドネシア、マレーシアで深刻なヘイズ(煙害)被害。
・インドネシアの大規模な野焼き・森林火災が発生源。
・専門家派遣・消火剤供与など日本の支援が求められる。
1990年代の中頃、シンガポールに駐在していた。4月に入ると暑気が増し、本格的な乾季の到来となった。高層ビルの27階の事務所から外を見ると下の方は「煙害(ヘイズ)」で、もやっていることがしばしばあった。現地紙には「ヘイズで気が滅入る」といった声が載った。車を運転していても視界が低下し、気をつける必要があった。
ヘイズを巡っては、インドネシアが「マレーシアが(ボルネオ島の)サバ・サラワク両州においてパーム油農園で違法の野焼きをするから」と言えば、マレーシアは「インドネシアが(ボルネオ島の)カリマンタン州でのパーム油生産に向けたアブラヤシの大規模農園(プランテーション)開発のため、熱帯林を伐採し、その下にある泥炭湿地溝から水を抜き、森林火災と二酸化炭素(CO2) 排出を引き起こしている」などと反論、いがみ合っていた。
■世界のパーム油の85%を2国で生産
2022年の世界のパーム油の市場規模は673億ドル(約9兆520億円、Grand View Research 調べ)とされる。世界の生産量の85%はインドネシアとマレーシアが占めている。
米国で2000年代中頃以降、トランス脂肪酸の摂取と健康との関連が問題視され、米食品医薬品局(FDA)が2006年にトランス脂肪酸含有量を食品ラベルに表示することを義務付けて以降、米国でのパーム油需要が増大したようだ。
日本のパーム油の輸入量は約68万トン(2020年)。使用の内訳は約80%がマーガリン、製菓用油など食用で、残りが石鹸など工業用。そのほとんどはインドネシア、マレーシアからの輸入で、大手商社によって輸入されている。
■大気汚染指数が上昇
ヘイズは3ー9月頃のモンスーンに沿って流れ、マレー半島やシンガポール、ブルネイそれにタイ南部、フィリピン、カンボジア、ベトナムなどで観測される。CO2のほか、微小粒子状物質(PM2.5)なども泥炭地火災で放出される。
このため、マレーシアなどでは、学校を休みとするところも出る。
マレーシアの英字紙によると、今年もヘイズが到来し、視野が200メートルに満たないところも出て、シンガポールと隣接するジョホール州やクアラルンプールなどで大気汚染指数が、健康に良くないとされる100を超えた(Nation紙4月16日付)。
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