意外と知らない「NYの桜」秘話
Japan In-depth / 2023年4月20日 23時0分
水野が小村に打診したのが6月だというから、日本の役人、官僚がする仕事としては大変なスピード展開である。シアトルに到着した桜は、列車で東海岸のワシントンに向けて出発し、ほぼひとつき後の翌年1910年1月6日、無事にワシントンDCに到着した。
しかし、日米親善の証として贈られた桜には悲惨な結末が待っていた。
到着した桜はアメリカ農務省の検疫により、ほとんどが害虫に汚染されていることが判明したのである。
1月19日、農務省は2,000本の桜はすべて処分しなければならないと結論づけ、タフト大統領に通知した。1月28日、大統領命令で、桜の木は焼却処分され、ノックス国務長官は日本の関係者に「深い後悔」を表明する通知書を送った。
人々の落胆は大変なものであった。
しかし、落胆が大きかった分、その無念さが人々の心に火を点けた。
桜の苗木を、今度はより、完璧な状態で再びアメリカに贈ろう、ということになったのである。
ワシントンに贈る桜は3,000本と増え、加えて、ニューヨークにも3,000本が贈られることになった。
結果、国の威信をかけたプロジェクトとなり、農商務省から博士や植物学者、経験豊富な造園家など、その道の専門家が集められた。桜の苗木はすべて荒川堤の桜並木から採取され、2年以上かけて入念に準備された。
そして、1912年2月14日。
桜の苗木、6,040本は、横浜港から、同じ日本郵船の「阿波丸」によって、シアトルに向けて出港した。
元号は「明治」から「大正」に変わっていた。
積み込まれた苗木は、ソメイヨシノを筆頭に、関山(カンザン)、一葉(イチヨウ)、滝匂(タキニオイ)などの12種類で、シアトル到着後、特殊な断熱貨物車に移され、3月26日、ワシントンDCに到着した。
ワシントンに苗木が到着した翌日の3月27日には、タフト大統領夫人、珍田日本大使夫人らの臨席により、ソメイヨシノ2本の植樹式が行われている。関係者がいかに桜の到着に心を砕いていたかがわかる。
▲写真 ワシントンDCに今も残る、1912年に、最初に植樹された2本の桜の木のうちの一つと、説明がある銘板(筆者撮影)
ちなみに到着した桜だが、検疫にあたった専門家が「こんなにみごとな輸入植物を見たことがない」と驚嘆する完璧さであったという。
この時ワシントンに移送された3,020本の桜は、その後、世界でも有名な桜並木となり、春のワシントンを象徴する場所となった。今ではサクラ祭りなども合わせ、この季節だけで、100万人の人が訪れるという。
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