ザンビア大付属病院、血液内科での研修記録
Japan In-depth / 2023年4月23日 7時0分
貧血の原因を精査するために必要な採血や画像検査にはコストがかかるが家族には支払い能力が一切ない。最後の手段は医師からの紹介状を持って家族がSocial welfareと呼ばれる行政機関を訪れ医療費支払いを依頼することだ。しかしながら患者やその家族もほぼ教育を受けておらず、病気に対してはもちろん、社会サービスに対する理解が非常に乏しかった。
Mvula医師は自らSocial welfareのオフィスを何度も訪問し粘り強く早期の診断/治療の必要性を訴えた。入院から1週間後、Social welfareからの許可が下り、ようやく各種検査が始まった。Mvula医師は言う。「私たちは患者さんたちにとって最後の砦。ベッドサイダー(患者の傍に常駐し身の回りの世話をする家族)の雰囲気やその人たちが食べているものを見れば普段の生活が想像できる。ザンビアには常にRoom for negotiation(交渉の余地)があるから私たちが患者の代わりに声を上げないとだめなの」。
私の指導医となった4年目内科専攻医のタリス医師も「テイラーメイド医療」という単語を何度も繰り返していた。その患者の支払い能力も考慮したうえで、治療方針の決定につながる必要最小限の検査を行い、診断的治療を行っていくことだ。採血や画像検査でカバーできない部分は日々の病歴聴取、身体診察で可能な限りimproviseしていく。そして、患者の代弁者となり必要な社会的サービスに繋いでいく。
金が命に直結する「命の格差」は明らかに存在するが、その差を少しでも埋めようと、限りある資源をimproviseし患者と共にテイラーメイドの医療を創り上げる。そんな血のにじむような医師たちの努力がザンビアの医療現場には広がっていた。
**本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会( Vol.23064 ザンビア大学付属病院、血液内科での研修記録)2023年4月10日に掲載されたものの転載です。
▲写真 ザンビア大学医学部付属病院血液内科に勤務している宮地貴士氏(提供:上昌広氏)
トップ写真:白内障手術を受ける患者@ルサカ眼科病院(2011年1月7日 ザンビア・ルサカ)※記事の内容とは関係ありません 出典:Photo by Per-Anders Pettersson/Getty Images
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