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欧州、原発への対応で二極化

Japan In-depth / 2023年4月25日 11時0分

欧州、原発への対応で二極化




村上直久(時事総研客員研究員、学術博士/東京外国語大学)





「村上直久のEUフォーカス」





【まとめ】





・ドイツが脱原発を達成、66年以上の原発の歴史にピリオド。





・ドイツは廃炉作業や廃棄物最終処理という重い課題に直面。





・IEAは、パリ協定の目標に沿いCO₂排出量削減するため原子力は不可欠との見方。





 





 欧州連合 (EU)内で最大の経済規模を誇るドイツでは4月15日、最後の原発3基が送電線から切り離されて稼働を停止し、”脱原発“が実現した。同国における66年以上の原発の歴史にピリオドを打った。





しかし、欧州では原発への対応で二極化が進んでいる。原発の安全性への懸念から、ドイツに加えてイタ リア、ベルギー、スイスなどでも脱原発にかじを切っている。





一方、フランス や東欧諸国などは「グリーン・トランスフォーメーション( GX:環境にやさし いエネルギーへの転換)」の有力な手段として原発の活用が続いている。ロシアのウクライナ侵攻で欧州でエネルギー価格が一時的に高騰し、需給がひっ迫 したことも原発の重要性を高めているとの見方もある。





 ◇原発政策の迷走 





4月15日に運転を停止したのはドイツ南部のイザール原発、南西部のネッカーウェストハイム原発、北部のエムスランド原発。ドイツの原発政策は迷走して きた。1986年のチェルノブイリ原発事故でドイツ国内でも放射能汚染がみられ たことから反原発の機運が高まった。





その後、16年間続いたメルケル政権の初期には原発推進に向かったが、2011年の東京電力福島第一原発の大惨事を目の当たりにして、17基あった原発を2022年末までに段階的に稼働停止させることを決定。停止期限はウクライナ戦争でエネルギー需給がタイトになったことも あり、23年4月15日まで延長されたが、4月15日には稼働停止は曲がりなりに も実現した。  





ドイツは原発に決別して大丈夫なのだろうか。経済運営に支障はないのだろうか。同国の電源構成における原発の割合は2004年の30%から22年には6% にまで縮小。一方、風力や太陽光など再生可能エネルギーは7%から45%まで拡大した。ドイツは再生可能エネルギーへの依存を30年までに80%まで高める野心的な方針を打ち出している。





さらにドイツには国内で万が一電力不足に 陥った場合、陸続きのフランスなど隣国から電力を融通してもらうというオプ ションもある。ドイツのハーベック経済相は米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビュー で、「ドイツは厳しさが予想された冬の間、エネルギー供給を確保することができた」と強調したうえで、経済面で今後、脱原発に対応できると自信を表明した。同国ではロシアからのパイプラインを通じた天然ガス輸入がストップしたことを背景に、液化天然ガス( LNGターミナルの建設が進んでいる。





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