欧州、原発への対応で二極化
Japan In-depth / 2023年4月25日 11時0分
ただ、ドイツの世論は脱原発には冷淡なようだ。大衆紙ビルトの世論調査では、52%がロシアの対独天然ガスの禁輸などを背景に、原発停止に反対を表明した。そうした中で、ドイツには多大なコストや時間を必要とする廃炉作業や住民の理解を得にくい廃棄物の最終処理という重い課題が残っている。ドイツは今回停止した3基を含めて30基の廃炉作業に直面するが、作業には10〜15年かかり、放射性廃棄物の処理も含めると488億ユーロの費用が掛かるとの試算もある。
◇隣国ポーランドに新規原発
一方、フランスやフィンランド、英国、東欧諸国などは原発は信頼できる電源であり、二酸化炭素 CO₂ の排出量も少ないとして重視。脱炭素化とロシアによる原油・天然ガスの禁輸への対応で切り札と位置付けている。
ドイツの隣国ポーランドは昨年、米国の電力会社、ウェスティングハウス・ エレクトリックと同国最初の原発建設の取り決めに調印した。同原発はドイツ のポーランド国境から320キロ入った地点に建設される。 前述のハーベック経済相は、欧州で新規建設が計画されている原発は、コス ト高騰や建設の遅れ、保守をめぐる問題などでトラブル続きだと指摘。ドイツの「エネルギー・システムは再生可能エネルギーを中心に策定されている」と 胸を張った。
国際エネルギー機関(IEA)は、2015年のパリ協定の目標に沿って、CO₂排出量の削減を実現するには原子力は不可欠であるとの見解を示した。
それでも気候変動問題やエネルギーの専門家は、ドイツの脱原発は、太陽光や風力発電の増加も見込まれることから、少なくとも今後数年間、排出量をわずかに増やすだけであろうとの見方を示している。ドイツの脱原発はようやく実現したが、今後、地球温暖化への取り組みやエ ネルギー安全保証の面でどのような影響が出るのか目が離せない。
(了)
トップ写真:ドイツで最後に稼働する3つの原子力発電所の1つ、ネッカーウェストハイム2原発。(2023年4月15日)出典:Photo by Thomas Lohnes / Getty Images
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