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ストが多発する国、見られない国(上)ポスト・コロナの「働き方」についてその6

Japan In-depth / 2023年4月26日 11時0分

 もともとフランスの年金制度は、業種などによって42ものパターンが存在するという複雑なもので、ざっくり述べると、エネルギー関連や公共交通機関における現業労働など、体力的な負担が大きいとされる職種の年金は、非常に手厚い。


 その財源としては、労働者と雇用者の双方が原資となる税金を負担するというもので、この結果、生活苦に直面する年金生活者が世界で最も少ない、とまで言われる国になった。


 このシステムは、1980年代の左翼政権時代におおむね完成を見たもので、1977年生まれのマクロン大統領が「働き始める」前の話であり、当時は年金生活者1人を支える現役の納税者が2.2人以上いたため、年金のみならず労働時間も週35時間に制限される「労働者天国」を歓迎する風潮が強かったのである。


 しかしながら、フランスも先進国の多くの実例に漏れず少子高齢化の傾向にあって、今や現役の納税者1.7人でもって1人の年金生活者を支えているのが事実だ。


 本誌の読者の中には、ここで2009年のギリシャ危機が想起された、という方もおられるのではないだろうか。


 これまた左翼連合政権の下、労働人口の4分の1が公務員という体制となり、年金も55歳から受給できた。その結果、膨大な財政赤字が生じていたのだが、2009年に政権交代が起きるまで、なんと隠蔽されていたのである。


 その後の騒ぎについては、よく知られる通りであるが、客観的に見て、マクロン政権がその轍を踏むまいとしているのだとすれば、私などにも理解できる。


 一方では、見直すべき公共支出は他にも沢山あるとされるのに、まずは年金改革というのはいかにも拙速ではなかったか、とも思う。


 いずれにせよ、英仏において、ストライキは「働く者の権利」だという考え方は、そう簡単に覆ることはないと思われる。


 ならば日本では、どうしてストライキのニュースを聞かなくなって久しいのか。次回、この問題を考察する。


(つづく。その1、その2、その3、その4、その5)


トップ写真:若手医師が賃金回復を求めてストライキを実行 2023年4月14日 イギリス・ロンドン 出典:Photo by Guy Smallman/Getty Images


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