補欠選挙 「自民辛勝」は正しい見方か
Japan In-depth / 2023年4月29日 11時0分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・衆参5選挙区での補欠選挙は自民党の4勝1敗で終わった。
・各メディア、「苦戦」、「薄氷を踏む勝利」などネガティブな報道ぶり。
・一部選挙区での逆風や候補者選びの混乱を考えれば、むしろ善戦、勝利とみるべき。
衆参5選挙区で4勝1敗とあれば、本来なら「圧勝」のはずだが、メディアの自民党への評価はいずれも辛口だった。
「思わぬ接戦」(読売、24日付朝刊)、「『慢心』自民 想定外の苦戦」(朝日、同)‥。
僅差での勝利がほとんどだったためだが、一部選挙区での強い逆風や候補者選びの混乱など有利な材料が少ない中でのこの結果は、むしろ勝利と評価すべきだろう。
■手厳しいメディアの論評
投票翌々日、25日付の各紙面ではさらに厳しい続報が掲載されていた。
「『敵失』に助けられた」(読売)、「苦戦に危機感」(朝日)、「首相解散判断に不安材料」(時事通信)ー。前日、自民党勝利を評価した産経ですら、「各地で接戦 野党分裂に救われ」などと厳しい論調に転じた。
いずれも、無党派層の票が日本維新の会に流れ、自民党の固定票も同様の可能性があるとの懸念による「祝勝ムードとは程遠い」(朝日)党内の雰囲気を反映している。
今回の結果にかかわらず、衆院の解散・総選挙が遠くないと予想される状況で、楽観論を戒めるのは当然としても、勝利は勝利だ。
選挙前の一部の予想では、ベストで自民の3勝2敗などとささやかれていた。
それだけに、「立派な結果だ。自信を持つべきだ」(麻生副総裁、24日の党役員会)との評価があるのも当然だろう。
■千葉、前議員辞職の逆風跳ね返す
個別の選挙区をみると、千葉5区は、政治資金規正法違反に問われた薗浦健太郎議員が昨年末に議員辞職したことに伴う補選だった。
そんな経緯から、自民党に対する逆風は尋常ではなく、今年に入ってからも与党は候補者を決めることができず、国民民主党候補に相乗りするーなどとの憶測も流れていた。
自民党が英利アルフィヤ氏を公募によって決めたのは、2月に入ってからだ。
しかも、英利氏は地元になじみが薄く、ほかの候補に比べれば知名度で大きく劣っていた。
とくに立憲民主党候補の矢崎堅太郎氏は地元千葉の県議を4期つとめて知名度が高く、やはり千葉を地盤とする野田佳彦元首相という超大物が選挙戦の陣頭指揮をとっていた。
そうした状況を跳ね返したのだから、約5000票という僅差でも大勝利というべきだろう。
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