外食産業30兆円を作った男たち
Japan In-depth / 2023年5月6日 18時0分
佐々木倫子(文筆家/金融アナリスト)
「佐々木倫子の世の中診断 ~人新生を生き抜くヒント~」
【まとめ】
・外食チェーン店における顧客の迷惑行為が問題になっている。
・外食産業は、コロナ禍で大きな打撃を受けた。
・2019年の市場規模は26兆2687億円、この2年間で約9兆3000億円も減少。
今年に入り、外食チェーン店における顧客の迷惑行為が問題になっている。迷惑行為を撮影して、その場のノリでSNSに投稿するのだ。
例えば、回転寿司チェーン「スシロー」は1月末に被害を受けたが、毅然とした対応が話題になった。ただ、この件で「スシロー」を運営する「FOOD&LIFE COMPANIES(東証プライム上場)」の株価は、1日で170億円近くも下落してしまった。
日本における外食産業の歴史をみると、チェーン展開の始まりは1970年の大阪万博での「ケンタッキーフライドチキン」の出店だった。そして、すぐに日本初のファミリーレストラン「すかいらーく」が登場し、さらに「マクドナルド(東京・銀座の三越銀座店1階)」と「ミスタードーナツ(大阪北部の箕面市)」の第1号店が71年にオープンした。そこから、外食産業は急速に発展し、今では私たちの生活に欠かせない存在となっている。つまり、1970年は外食産業元年とも言えるわけだ。
外食産業は、経済や社会の状況に大きく影響される業界だ。コロナ禍の影響も例外ではなく大きな打撃を受けた。日本フードサービス協会付属機関である外食産業総合調査研究センター(※)によると、2019年の市場規模は26兆2687億円だったが、この2年間で約9兆3000億円も減少した。この金額は、2021年のフィリピンの国家予算に匹敵する。
日本フードサービス協会は1974年に農林水産省に認可され、日本の外食産業の発展と豊かな食文化の創造に貢献を目的に設立された。800社以上が加盟しており、外食産業における最大規模の組織となっている。現在、顧問として活躍されている加藤一隆氏は、設立および協会の発展に大きく貢献された。加藤氏が昨年秋に出版した『「おいしい」を経済に変えた男たち』(TAC出版)は、チェーン展開の歴史を知る上で貴重な資料だ。
この本には、吉野家、ロイヤルホスト、モスバーガー、さぼてん、ハングリータイガー、サイゼリヤの創業者たちの情熱や苦悩、成功までの軌跡が詳細に書かれている。この経験やノウハウは、予測不能な時代を生きる人々にとって貴重なヒントになるだろう。
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