東欧、ウクライナ産穀物に反発
Japan In-depth / 2023年5月8日 11時0分
ウクライナ支援でEU諸国は団結してきたが、その余波で、東欧の農民が窮地に追い込まれ、生き残りがかかる問題となってきたので、団結にひびが生じかねない状況となった。
米紙ニューヨーク・タイムズは、こうした状況は東欧諸国において、ロシア寄りの姿勢を示す極右グループの伸長につながるかも知れないとの見方を報じている。ポーランドでは来年、議会選挙が予定されおり、ルーマニアとスロバキアでも選挙が迫っている。EU内で、東欧諸国はこれまでウクライナ支援で先頭に立ってきたと言っても過言ではないだろう。
ポーランド、ルーマニア、スロバキアはこれまでウクライナに対して武器の供与に加えて、兵士の訓練も行ってきた。こうした中で欧州委は、東欧諸国における政治的緊張を和らげるために損失補填目的でポーランドなど東欧5カ国に1億ユーロを供与するが、実効性は不透明だ。
◇ロシアの出方も注目
ロシアの動向からも目が離せない。黒海を経由する輸出の今後が見通せない。国連とトルコが仲介したウクライナ産穀物のための取り決めはこれまで2回延長されたが、早ければ5月中旬にも期限が来る。ロシアはこの問題を政治化し、外交的取引材料として使っている。ロイター通信によれば、ロシア外務省は欧米がロシアの農産物輸出への制限を見直さない限り、5月18日以降の延長はないと主張しているという。
たとえ取り決めが延長されても、中東、アフリカなどにおける食料品不足は解消しない。ウクライナからのと穀物船の出港回数は昨年、取り決めにもかかわらず、前年から半減したと国連貿易開発会議(UNCTAD)は報告している。
春が到来し、トウモロコシなどの作付け時期が迫っている中で、東欧諸国の農家では穀物エレベータ―には昨年収穫分が大量に売れ残っており、山積みになっているという。
こうした中で、欧州委関係者は、ウクライナ産穀物輸出問題が解決しなければ得をするのはロシアだとして危機感を強めている。
(了)
トップ写真:小麦をコンバインで収穫する様子(2022年8月5日 ウクライナ フメリニツキー)出典:Photo by Alexey Furman/Getty Images
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