日本はイランになぜ甘いのか
Japan In-depth / 2023年5月9日 23時14分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・ロシアのウクライナ侵略を軍事支援するイランに対し、日本は非難せず制裁措置も取らない。
・米元大統領補佐官ボルトン氏、G7の連帯に反すると日本企業名あげて警告。
・日本とイランとの商業取引は米国にとり許容できず、全面的に断つよう要求。
日本はなぜかイランに対して異様なほどに寛容である。国際的にはイランはイスラエルの抹殺を一貫して唱える。そのための手段とも思われる核兵器の開発に驀進する。国際テロにも関与する。自国民にはイスラム原理主義の厳しい戒律を課し、女性の社会的活動を認めない。わが日本の拠って立つ立場とはおよそ相反する国家がイランなのである。
ところが日本側では「イランは親日国家だから特別な友好が必要だ」とする声が国民レベルでも、政権与党内でも、強いのだ。その結果、イランの対外的な軍事行動やテロ活動に対して日本はきわめて寛容になる。その日本の対イラン外交に対してアメリカ側の識者から叱責と呼べる非難の声が飛ばされた。
「イランのロシアへの軍事支援を非難しないのはG7諸国でも日本だけだ」
「日本はイランがロシアのウクライナ侵略を直接に軍事支援していることになんの制裁措置もとっていない」
「日本はイランと貿易取引を続けることでロシアのウクライナ侵略を助ける結果となっている」
こんな警告がアメリカの安全保障の権威から発せられた。2023年4月末、広島でのG7会合を目前とした時期だった。
イランはロシア軍がウクライナ攻撃に使う無人機やミサイル類を提供しており、そのイランの軍事関連組織と商取引をする日本はロシアのウクライナ侵略に間接寄与するに等しく、G7の連帯にも反する―というこの指摘は具体的な日本企業の名まであげていた。
この警告はトランプ前政権の国家安全保障担当の大統領補佐官だったジョン・ボルトン氏により発せられた。ワシントンの保守系政治雑誌「ナショナル・レビュー」の4月下旬号へのボルトン氏の寄稿論文という形をとっていた。ボルトン氏はトランプ前大統領とは意見が衝突して辞任したが、ブッシュ初代、二代両政権で国連大使や国務省高官を務めた外交、戦略の権威とされる。
▲写真 ジョン・ボルトン米元安全保障担当大統領補佐官 出典:Photo by Win McNamee/Getty Images
「ウクライナ支援のために日本は反イランの姿勢をとらねばならない」と題する同論文は、イランがロシアのウクライナ軍事侵攻を支援して無人機やミサイルを供与し、ウクライナの民間人の殺傷に寄与していると、まずイランを厳しく非難していた。
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