現状維持派候補当選も台湾断交説消えず-大統領選後のパラグアイ
Japan In-depth / 2023年5月10日 8時18分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・台湾と外交関係を持つ南米唯一の国パラグアイ大統領選で現状維持の与党候補当選。
・8月発足の新政権下でも親台路線を続けるかどうかが最重要テーマ。
・国内農業団体の圧力、対米関係の緊張などから中国との国交樹立に向かうか。
■ 野党乱立で予想外の与党候補大勝
台湾断交か否かを争点に先日行われた南米パラグアイの大統領選は親台外交の継続を主張する与党コロラド党の候補サンティアゴ・ペニャ氏(元財務相)が、中国との国交樹立をとなえる野党連合候補を大差で破り、当選した。ペニャ候補が予想外の大勝を果たした要因について現地メディアは野党候補の乱立でアンチ与党の票が分散したことに加え、ペニャ氏の経済的手腕への期待が高まったことなどがあると伝えている。
この結果、パラグアイは引き続き南米で唯一台湾と国交を持つことになる。ペニャ次期大統領は8月15日、正式に大統領に就任し、5年間政権を担当するが、この間台湾との外交関係を維持するかどうかは確実ではない。親中外交へ転換するとの説がくすぶり続けると予想されるからだ。その理由としては主に3点が挙げられよう。
■ 対中接近へ農業団体からの圧力は続く
第1の理由はパラグアイの国内要因である。同国は世界で有数の食肉、大豆およびトウモロコシの生産・輸出国。国内には強力な食肉、穀物業界の団体が存在し、その政治的影響力は大きい。これらの団体は、台湾との関係を維持しても大きな利益を得られないと強い不満を抱いており、巨大な中国市場へのアクセス強化を訴え続けている。新政権発足後、対中接近を要望する業界の圧力が弱まることは考えにくい。
また、パラグアイは財政赤字の増大を抱える中、ペニャ次期大統領は50万人の雇用創設や貧困対策の強化を約束しており、財源不足をいかにカバーするかが大きな課題。このためには食肉や穀物輸出拡大が不可欠となり、農業団体の要望を無視することはできないとみられる。「台湾と断交し、中国と国交を樹立するかどうかは新政権下でも最重要テーマという位置付けになる」との見方が現地の政治アナリストらの間で広まっている。
■ 対米関係悪化なら中国がつけこむ?
第2の理由としては対米関係の緊張が予想されることだ。米国務省はパラグアイ大統領選直後、ペニャ氏当選を歓迎するとの声明を出した。しかし、同時に国務省は汚職対策でペニャ次期政権と協力を進めることを期待していると表明している。この点で見逃せないのは、ペニャ氏当選の後ろ盾となったコロラド党総裁であるカルテス前大統領が、汚職とテロ組織関与の疑いで米国から制裁対象に指定されていること。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
石破首相、中国・習近平主席の〝国賓来日〟画策か ただ1人辞任迫った青山繁晴議員が警鐘 居座りの悪夢、自民党の根幹崩壊
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月14日 11時43分
-
米大統領選挙はトリプルレッドで終結か。次の注目点は「トランプ人事」
トウシル / 2024年11月14日 7時30分
-
米大統領選はトランプ氏圧勝。「祝福」を送った中国政府が抱く三つの意図とは?
トウシル / 2024年11月7日 18時0分
-
中国は米大統領選の行方をどう見ているのか。八つの視点から解説
トウシル / 2024年10月31日 7時30分
-
キリバス、親中派の現職が3選 マーマウ大統領、習氏も祝福
共同通信 / 2024年10月28日 17時13分
ランキング
-
1「死んでいるアヒルが増えている」 埼玉・行田市の農場で高病原性鳥インフルエンザ疑い 埼玉県内では今年初
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 22時8分
-
2名古屋市長選挙、広沢一郎氏が初当選…河村たかし前市長から後継指名
読売新聞 / 2024年11月24日 21時49分
-
3強盗致傷事件被害品のクレカを受け取った疑いで21歳大学生を追送検…SNSで闇バイトに応募
読売新聞 / 2024年11月24日 16時51分
-
4三笠宮妃百合子さまの通夜営まれる 秋篠宮ご夫妻ら参列
毎日新聞 / 2024年11月24日 19時32分
-
5県議会自主解散など要求=維新、兵庫知事選を総括―吉村共同代表
時事通信 / 2024年11月24日 15時35分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください