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習政権の「森林から農地への転換」政策

Japan In-depth / 2023年5月12日 6時0分

習政権の「森林から農地への転換」政策


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)


【まとめ】


・中国の四川省成都市で森林を農地に転換する政策が進んでいる。


・目的は中国における食糧逼迫問題を改善するためか。


・中国共産党、森林を「水利の理想的な自然対策」と考えていないようだ。


 


前世紀末から近年に至るまで、中国共産党は「農地を森林に戻す」運動を推進してきた。


成都市では「都市周辺緑道」に400億元以上(約8000億円)を投資(a)した。ところが、最近、地元政府によって「都市周辺緑道」は潰されて、小麦などの作物を作る農地に置き換えられている。成都市トップ、施小琳は習近平主席の側近、丁薛祥第1副首相と長年、同僚だったという。したがって、施小琳は丁薛祥の指示に従ったのかもしれない。


ただ、このような地方政府の動向は中国人民の怒りを買った。習主席の父、習仲勲の霊廟(出身地の陝西省富平県)には「森林の農地への転換」に抗議する赤い横断幕が掲げられた。そこには「森林を農地に戻し、墓地を平坦にし植物を栽培している。指導幹部は身をもって模範を示せ」と書かれている。


習仲勲廟の広さは、香港島(78.65㎢)の約3分の1近くの4万ムー(2667ヘクタール=26.67㎢)である。


近頃、中国当局は頻繁に「食糧安全保障」問題を強調している。もしかすると、中国の食糧供給が逼迫しているので、「森林を農地へ戻す」政策を強行しているのではないだろうか(後述)。


今年(2023年)3月21日、武漢大学中国農村管理研究センターの呂徳文・研究員は「農地の『非食糧化』」(=『森林化』)を“是正”するため、草の根幹部は『政治的任務』の必要性から、それを進めざるを得なかった」と述べている。


実は、1998年の長江大洪水後、朱鎔基首相(当時)は「閉山して木を植え、農地を森に戻そう」と呼びかけ、約4半世紀前から「農地を森に戻す」運動が展開(b)された。


だが、最近、「農管」と呼ばれる農業総合行政執行官が「森林を農地に戻す」ため暴力的に樹木伐採を行っている。


習政権が「森林の農地への転換」と「農村管理」を強化したのは、ひょっとして、中国が直面している食糧危機の打開、及び「台湾侵攻」準備と関係があるのかもしれない。


もし、地表に森林がない場合、新たに開拓された農地では、大雨が降ると土石流が発生する恐れがあるだろう。


さて、『rfi』(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)は、ドイツ在住の水利生態学の専門家、王維洛(「三峡ダム」にも詳しい)にインタビューを行っている(c)。王は以下のように語った。


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