「激動の時代と広島G7サミット」
Japan In-depth / 2023年5月14日 12時34分
ここで注意する点として、人々の考え方は出身国の歴史や文化に影響されており、それぞれ異なる考えを持つのは当然であることが挙げられる。「我々の考え方は日本が辿ってきた歴史によるものだということを忘れてはならない。もし我々の価値観を唯一無二のものとして他国に押し付けたら、それはロシアがウクライナに対して行った侵攻と同じである。大切なのは、相手がどのような価値観で世界を見ているのかを理解し、我々が擁護する価値観に対して謙虚になることだ」。
「G7がその「謙虚さ」を有していることが今後の希望であり、新興国から共感を得る一助になる。特に日本は戦後植民地支配を経験しておらず、各国の橋渡し役としての役割を果たしてきた。そこで培った信頼も役立てながら、最も共感を得られやすい「法の支配」という価値を前面に出し、各国を包摂していくべきである」と細谷氏は指摘した。
▲写真 日本の安全保障について意見を述べる秋山氏 © Japan In-depth 編集部
次に秋山氏を中心に、核戦略を中心とした安全保障戦略を日本はどう推進すべきか述べられた。「日本は唯一の被爆国として、戦後一貫して平和主義の路線を取っている。しかし、現実には核拡散防止条約には参加、核兵器禁止条約には不参加などその態度が一枚岩であるとは言えない。その背景には、核のない平和な世界を願う一方、核の力を完全に手放せば日本の抑止力が低下し、一層米国頼りになってしまうという懸念がある。このジレンマは戦後一貫して日本が抱えている難題だ」と公開授業の受講者一人が問題提起をした。
「重要なのはこの難題に対し、短期的な視点と長期的な視点を持つことだ。短期的には核による抑止に頼らざるを得ず、日米の枠組みが重要になるだろう。しかし長期的には、どのように世界で核を廃絶する風潮を作るか考え続けるべきだ」と秋山氏は述べた。
今回のG7サミットに目を移すと、広島が開催地ということで核の悲惨さを発信する機会がある。特に初日は各首脳を平和公園で迎える予定であり、被爆の経験から伝えられるものがあるはずだ。加えて、細谷氏は核兵器が最後に使用された長崎の他に、「新たに最後の被爆地を生まないよう訴え続けることが重要だ」と述べた。
広島と長崎の経験から、核廃絶の実現に向けて、核不使用を発信することは私たち一人一人にできることであり、それぞれが当事者意識をもってしていくべきである。
第二部ではグローバルサウスについて様々な議論が交わされた。
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