「激動の時代と広島G7サミット」
Japan In-depth / 2023年5月14日 12時34分
公開授業の受講者の一人が、そもそも「グローバル・サウス」という呼称自体、曖昧なものではないかと講演者に質問した。グローバルサウスは一般的に、米国など西側諸国と中露の権威主義国の間に位置するアジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ地域の新興国を指す。しかし、政府開発援助の受け取り国を新興国とする見方に沿うと、中国はまだそのグループに属することになる。
こうした曖昧さがあるが、細谷氏は戦略的に「グローバルサウス」の呼称を容認する重要性を述べた。「確かに、グローバルサウス諸国はそれぞれの経済水準、利害を有しており多様である。しかし、今年1月に125か国から参加を得たサミット「グローバルサウスの声」を主催したインドは、自分たちでルールや規範を作りそれに従うという方針を示している。このように、インドは「グローバル・サウス」という語を西洋の価値の押し付けに対抗する概念として戦略的に使用している。だからこそ、日本も含めG7側はそうした呼称を容認し、寄り添う姿勢を見せることは大切だ」と述べた。
次いで西濵氏は、ウクライナ紛争などで世界の分断が進み国際貿易に影響が出るのと、輸出に依存する多くの新興国が成長を鈍化させてしまう点に課題があると述べた。
▲写真 グローバルサウスに対する見解を述べる細谷氏 © Japan In-depth 編集部
一方で細谷氏は、世界の分断が加速する原因として米中の国家安全保障戦略とデカップリングの2点を挙げた。「これらは両国の完全対立に繋がり、分断を極めている大きな要因である。しかし同時に、民間や経済、デジタルの世界ではより一層グローバル化が進んでいる。つまり、分断と融合の二つのベクトルが同時に働いており、国際経済の不透明性をもたらす原因になっている」という。
このように政治的・経済的側面の双方を融合して考える必要がある中で、今回のG7サミットで日本は今まで以上に議長国としてのリーダーシップが求められる。広島G7サミットが、法の支配に基づく国際秩序の構築や国際経済の復興を実現する起点となるよう期待したい。
また、国際平和文化都市である広島の特徴を活かし、「グローバルサウス」をはじめとする他国への呼びかけを通して、核廃絶の推進に期待したい。特に、隣国中国の核軍縮を実現させるために、中国と経済的結び付きが強いASEAN諸国や湾岸諸国などの「グローバルサウス」新興国を味方につける必要がある。
そのためには、講演で結論として出ていたグローバルサウス諸国の価値観を尊重した上で、核廃絶の価値観に共感してもらえるようにアプローチしていくべきだ。
トップ写真:広島サミット公開授業の様子 ©Japan In-depth 編集部
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