アメリカはいまーー内政と外交・ワシントン最新報告 その1 熱い論議は中国とトランプ
Japan In-depth / 2023年5月17日 11時0分
だから、連邦議会の上院・下院の公聴会その他へ行ってみても、もちろんマスクはなくて自由に入れます。私もワシントンが長いですから、旧知の各界の人がいて、1年ぐらい前まではなかなか人にも会えなかったが、今回はほとんどその制約がありませんでした。自由に人と会えるのです。
あるいはワシントンの特徴の1つである多数の研究機関の多様な行事にも出席できる。その種のセミナーやシンポジウムにも出て自由に探求し、バイデン政権の代表たちの話を聴くという機会がふんだんにありました。ですから、ワシントンでの状況というのは非常にフレッシュな感じで、皮膚感覚で取得して帰ってきたという感じです。
◇ 内政の中心はやはりトランプ前大統領
いまのワシントンでいったい何が問題なのか、何が論議の的なのか、簡単に言ってしまうと、まず、チャイナ、チャイナです。中国に関する論議が異常なほど超党派――民主党・共和党の別、保守・リベラルの別を超えてみんなで中国について論じています。しかも、その傾向がますます強固になってきました。
中国という存在は、このままでいくとアメリカ合衆国の根底を揺るがす、しかもアメリカ合衆国の国民が長年積み重ねてきた秩序とか経済のメカニズムとかを根底から崩されかねない、なんとかしなければいけないという意識です。その高まりが議会の実際の法案審議とか公聴会とかいう形で展開されています。異常なほどの中国論議なのです。
▲写真 中国もワシントンの議論の的。写真はガボンのオンディンバ大統領との会談に臨む習近平国家主席(2023年4月19日 北京) 出典:Photo by Ken Ishii-Pool/Getty Images
もう1つの言葉がトランプです。トランプ、トランプ、トランプで、とくかくトランプについて語らないとアメリカの今後の政治は語れないというほどなのです。
この点、日本側のアメリカ通とされている人たちの一部で、昨年11月の中間選挙でトランプ氏が支援した候補者の一部が負けたことをとらえて、だから最大の敗者はトランプだったというような議論が結構多かった。それにちょっと上乗せをして、もうトランプ氏は終わったのだというのも日本のアメリカ通とされる人の間で結構、多数派ふうの意見となっていました。
しかし、ワシントンで見た状況は、そんなふうではありません。やはり、トランプ氏は死なずという実態なのです。死なないどころか非常に元気で、アメリカ政治の中心的な役割を演じています。トランプ氏がどうなるかによってアメリカの今後の政治がどっちへ行くのか、どうなるのかという状態なのです。アメリカ政治のカギを握る人物がドナルド・トランプ氏なのだ、という現実なのです。
同時に、ドナルド・トランプという人に対するアメリカ人、アメリカの社会における好き・嫌いがきわめて激しいことも事実です。トランプ氏が嫌いの人たちは徹底して嫌いです。蛇蝎の如くに、邪悪な存在であるかのようにみなしています。
(その2につづく)
**この記事は鉄鋼関連企業の関係者の集い「アイアン・クラブ」(日本橋茅場町の鉄鋼会館内所在)の総会でこの'月中旬に古森義久氏が「アメリカの内政、対中政策――ワシントン最新報告」というタイトルで講演した内容の紹介です。
トップ写真:いまもワシントンの議論の的になっているドナルド・トランプ前大統領(2023年5月1日 英・スコットランド)出典:Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images
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