突破口が見えぬ北朝鮮の食料危機
Japan In-depth / 2023年5月23日 23時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・金正恩政権の食料専売政策が破綻、栄養失調に陥る人が続出。
・日照りが続き水の確保が困難に。夏には大雨による洪水の恐れ。
・コロナによる封鎖が続き、状況の改善の兆し見えず。6年ぶりの脱北も。
5月16日、金正恩総書記は、発射が遅れている軍事偵察衛星1号機に関する行動計画を承認するために、28日間の「潜伏」を終え、およそ1カ月ぶりに姿を現した。先月18日に国家宇宙開発局を訪問して4月中の軍事偵察衛星発射を匂わせていたが、思うようにことが運ばず、イライラをつのらせていたようだ。
この約1ヶ月の潜伏に対しては、ストレスが溜まり、持病が悪化して元山で治療を受け、休養を取っていたとの見方が有力だ。金正恩の手首に注射跡のように見える赤黒い斑点があったからだ。
金正恩がストレスをためる主要な要因には、「ワシントン宣言」で明示された、米韓の対北朝鮮核拡大抑止強化や韓日関係の急速な改善等があるが、農業の停滞と食料危機はその一つだ。軍の徴兵期間を7年から10年に再び延長し、延長した3年間兵士を農村に動員しているが、思うような成果は得られていない。
5月に入り、地方都市での国営食糧専売店での販売と、国営企業の食糧配給が滞り、栄養失調に陥る人が続出し、死亡する人が増えている。国家が供給すべき食糧を確保できていないうえ、都市の脆弱層が現金収入を絶たれて食べ物を購入できないためだ。
■今年も続く北朝鮮の深刻な日照り、田畑はからから
衛星から観察すると、北朝鮮の作付け面積は、前年比13%ほど増加しているようだが、今年も日照りに見舞われている。
平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、今年の春の日照りは、昨年とほぼ同じか、若干ひどい状況だという。田畑はカラカラに乾いた状態で、貯水池の水位も極端に低くなっているらしい。
北朝鮮の労働新聞は4月17日、「地下水施設を準備したからと油断してはならず、袋に水を入れて用意するなど、日照りを予見して対処しなければならない」「日照りや大雨の被害を防ぐことのできる現実的な措置を考えなければならない」と論じている。しかし、現場の農民の立場からすると、これらは「机上の空論」に過ぎないと情報筋は指摘する。
平城(ピョンソン)や順川(スンチョン)では大同江(テドンガン)から水を引き、安州(アンジュ)、粛川(スクチョン)、文徳(ムンドク)、平原(ピョンウォン)などの穀倉地帯では、清川江(チョンチョンガン)や台白湖(テソンホ)から水を引いて使っているが、揚水機を使わず自然の流れに任せる方式であるため、深刻な日照りにはほとんど役に立たないという。
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