「休めない仕事」を見直すべき時 正しい(?)休暇の過ごし方 その7
Japan In-depth / 2023年5月25日 11時0分
都内の私大で教鞭を執る友人に聞いてみたところ、
「なんだかんだと言っても、教員というのは安定した職業なので、志望する学生が目に見えて減っているとは思えない」
としつつも、
「ただ、出身地の採用枠が十分でないと、意外と狭き門になってしまうのが現実」
なのだと教えてくれた。
言われてみれば、教員の大半は地方公務員で、採用は各自治体が行っている。地元出身者が有利というのは、通勤が便利で単身赴任などさせる必要がなく、かつ、自治体の財源から給与が支出されることから、納税者に納得してもらいやすい、ということであるらしい。
つまり、教員採用試験に限られた問題ではない。
ここで再び見方を変えると、わが国は深刻な財政赤字が続いており、地方の台所事情も楽ではない。当然の結果として、公務員の人件費を抑制する必要に迫られるケースが多く、教員の人件費だけ潤沢に、というわけにはいかない、という事情がある。
このことは首都圏で、財政基盤が強固な東京都だけが教員不足に陥っておらず、埼玉、千葉、神奈川など周辺の自治体は事情が異なる、というデータが如実に物語っているのではないだろうか。
とは言え、これだけでは、教員に「なりたがらない」学生が増えてきているという、もう一方の事実が説明できない。
文部科学省などの調査によると、とりわけ中学・高校の教員は、部活絡みの業務など、授業や校務以外の仕事が多すぎて、拘束時間に見合う給与が得られない。
言い換えると、
「安定した職業ではあるだろうが、決して割のよい仕事ではない」
と見なす傾向が見られるそうだ。
本連載でも述べたことがあるが、私の亡母は教師をしていたので、夕食後も茶の間でテストの採点をしている姿を見ている。
子供の頃は、そうした問題意識を持っていなかったが、あれは「サービス残業」ですらなかったということなのだろう。ただ、夏休みなどはかなりまとまった休暇が取れていたことも、やはり身近で見知っているので、結局は帳尻が合っていたのではないか、とも思う。
ただ、亡母の勤務先は私立の女子高だったので、公立の中学・高校とは色々と事情が異なる面もあったのかも知れない。
いずれにせよ、教員採用の要諦は「柔軟かつ厳格」であるべきだ、というのが私の考えである。
現時点で不足を来しているからと言って、採用基準を緩め、教員の質が低下したのでは本末転倒と言う他はない。また、自治体単位での採用には別の弊害もある。
現行の採用制度では、採用後のデータが共有されていないため、たとえば児童に対するわいせつ行為などの不祥事で教職を追われた者が、他の都道府県に移って教員免許を取得し直すと、知らぬ顔で教室に戻れる、ということが起きる。実例がある話なのだが、まだ幼い被害者がいる案件なので、詳細までは伏せさせていただくが。
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