姜慶五教授から学んだこと
Japan In-depth / 2023年5月26日 8時14分
筆者提供)
福島の様々な被災地を訪問した姜教授のチームは、見聞きしたこと、経験したことを事細かくメモした。随行した若手研究者は「毎晩、ミーティングし、姜教授にその日のサマリーを報告することを要求される」と筆者に語った。帰国後、姜教授は学術論文、学会、講義など様々な機会に福島の現状を報告した。このような発信が、福島の風評被害の緩和に大きな貢献をしたはずだ。
時に、我々のチームを上海に招聘してくれた。写真3は2019年5月、復旦大学で、医療ガバナンス研究所と復旦大学が合同シンポジウムを開催したときの光景だ。我々の研究チームは、東日本大震災から8年後の福島の復興状況や、放射線被曝で亡くなった人はいないのに、長期間にわたる避難のストレスなど間接的な要因により、大勢が命を落としている現状を紹介した。この発表は中国の研究者に衝撃だったようだ。
写真3 (復旦大学公共衛生大学院の正門にて)
筆者提供)
コロナ禍でも、医療ガバナンス研究所と復旦大学は毎月ZOOMを用いて、交流を続けた。1回2時間、3人の研究者が最新の研究状況を報告した。詳細は省くが、我々にとって、ゼロコロナ対策の現状を知る好機となった。
2023年に入り、日中ともコロナ規制を緩和した。5月13日、我々は姜教授の招待で、5年ぶりに上海を訪問した。今回の目的の一つが温州医科大学を訪ねることだ。
温州市は、上海の南、浙江省東南部に位置する人口約910万人の都市だ。上海から約450キロ、鉄道で4時間半を要する。今回の訪問も、姜教授と医療ガバナンス研究所の梁栄戎氏が調整したのだが、当初、梁氏は温州訪問に反対だった。姜教授に「多忙な先生方を中国に連れていくのに、往復9時間もかけて地方都市を訪問する意味はあるのか」と繰り返し、姜教授に訊ねたらしい。これに対して、姜教授は「絶対に先生方には後悔させない」と答え、半ば強引に今回の温州医科大学訪問を実現させた。
結論から言うと、今回の温州医科大学の訪問は良かった。上海とは違う中国の地方都市の姿を見ることができたからだ。
私が驚いたのは、現地のスタッフの熱意だ。我々が訪問したのは、温州医科大学第二病院だが、最寄りの平陽駅に降り立つと、駅前には5名ほどのスタッフが我々を待ち受けていた。車で10分ほど、医科大学の玄関前に到着すると、共産党委員会書記で産科主任である王娜医師、脳外科医である李先鋒病院長をはじめ、幹部が勢揃いしていた。そして、一緒に昼食をとった後の情報交換会での発言は直接的で積極的だった。
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