ネパールと日本の医療の"スタンダード"の違い
Japan In-depth / 2023年5月30日 23時34分
金田侑大(北海道大学医学部)
【まとめ】
・春休みにネパールの3病院を回った。
・同国では、患者に食事が出ず、医療従事者が患者の世話をしてくれることもない。
・医者はほぼ全員、アルバイトをしていて本来の病院にいるのは数時間だけ。
病院のシングルベッドで一家団欒。
久々のお見舞いではありません。ネパールの入院患者の毎日です。
春休みに訪れたネパールの病院で、ベッドをいつも、患者さん一人で広々と使えているような人は、妊婦さん以外にはほとんど見かけませんでした。
さて、私は春休みに3つのネパールの病院(パタン病院、チョウジャリ病院、Green Pasture病院)をまわらせていただきました。この3つの病院をまわった際に、共通項ではありながら、日本の医療とは大きく違うなと感じた点がいくつかありました。
まず、食事について。日本では入院患者に対しては、特別な制限のない一般食や、疾患や治療に合わせて栄養量が細かく設定されている治療食といった形で、医師の指示のもと(時には管理栄養士が監修し、)治療戦略の一部として、患者さん一人ひとりの状態に合わせた食事が提供されます。
しかし、ネパールの病院では、入院している患者にスタッフがご飯を配膳している場面に出くわすことは一度もありませんでした。それもそのはず、ネパールではたとえ大学病院であっても、患者に食事が出ないことが平常運転だからです。(糖尿病患者向けの食事が用意されることはあったりするそうです)
写真)ネパールの病院で子どもを診察する金田氏
筆者提供)
栄養バランスも気になるところですが、この背景にある問題は、コストや衛生状態といった問題ではなく、伝統的身分制度、いわゆるカースト制度*です。ネパールの方々は通念として、"身分が違う人がつくった料理を口にしてはいけない"と考えているそうで、この価値観が病院での食事の提供を妨げる要因となっています。
次に入院について。先ほど、ネパールでは病院食が出ないと書きました。では、入院患者の食事は誰が準備するのか。患者の家族です。ネパールの一般的な病院では、食事が出ないだけでなく、看護師さんなどの医療従事者が、患者の身の回りの世話をしてくれることはありません。そのため、入院する場合は家族などの付き添いが必要になります。私が訪れた3つの病院全てで、シングルベッドに患者一人で寝ている光景を見ることはほとんどありませんでした。あったとしても妊婦さんぐらいでしょうか。
この記事に関連するニュース
-
がん治療の現場に異変、深刻化する「医師の偏在」 「医師不足で手術待ち数カ月」の恐怖シナリオ
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時10分
-
余命1年で入院「病院食」のレベルの高さに驚いた 限られた予算で豊富なメニューをそろえる創意工夫
東洋経済オンライン / 2024年11月23日 9時40分
-
ぬいぐるみ診察「病院怖くない」園児が白衣で “お医者さんごっこ” 富山市
KNB北日本放送 / 2024年11月12日 16時22分
-
クリニックの受付中、患者さんから「待ち時間が長すぎる!」「料金なんて払わない」とクレームが! 主任は「我慢して」と言うけれど、“損害賠償請求”になる可能性も!? 誤解の多い「応招義務」とあわせて解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 4時20分
-
「とりあえず薬を」という横柄な医師が"秒"で黙る…医師・和田秀樹が伝授「診察時に出すと効果的なアイテム」
プレジデントオンライン / 2024年10月28日 10時15分
ランキング
-
1「死んでいるアヒルが増えている」 埼玉・行田市の農場で高病原性鳥インフルエンザ疑い 埼玉県内では今年初
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月24日 22時8分
-
2名古屋市長選挙、広沢一郎氏が初当選…河村たかし前市長から後継指名
読売新聞 / 2024年11月24日 21時49分
-
3金山労働者の追悼式、初開催=韓国側は不参加―新潟・佐渡
時事通信 / 2024年11月24日 16時25分
-
4「自爆営業」はパワハラ、厚生労働省が防止法指針に明記へ…企業へ対策促す
読売新聞 / 2024年11月24日 21時13分
-
5三笠宮妃百合子さまの通夜営まれる 秋篠宮ご夫妻ら参列
毎日新聞 / 2024年11月24日 19時32分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください