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入れ替わる?日米企業それぞれの「会社と従業員の関係」、そして「HR3.0」前篇

Japan In-depth / 2023年6月3日 18時0分

一方、米国では、90年代に、東西冷戦の終結という機会を機敏に捉え、大々的なM&Aによる産業の再編、そして勃興しつつあったインターネットを活用したIT企業の巨大化によって、グローバル化した世界市場における覇者となっていったわけです(米国主導で軍事利用を目的として開発されてきたインターネット技術を、米国が商用利用に舵を切ったのが80年代後半と考えられています)。





そして、この日本における「失われた30年」の間、企業と社員の関係、そして会社というものについての考え方について日米では下記のような「逆の動き」となっていったことを日本人である筆者は複雑な気持ちで見ていました。





日本~日本株式会社を成立させてきた「企業の成長」が失われた状況で、日本企業が否応なしに求められたのは、株主を頂点とする「ガバナンス体制」の整備など欧米的な経営体制の構築だった。具体的な経営方針としては目先の利益をアップさせるための効率化や合理化が是とされた社員との関係でも「成果主義」が導入されるなど、「人を大事にする」ことの意味は、解雇をしない(法的に出来にくい)ということだけで、給与はおろか人財育成投資についても先進国中低位水準となった。解雇されない地位に安住し、社員が「自主的に学ぶ」率も先進国中最悪の水準となっている。









▲表 出典:経済産業省「未来人材ビジョン」





米国~一方米国社会では、貧富の差の拡大による社会不安、様々な点での「分断」が進みました。企業社会では、IT巨人への儲け過ぎ批判、CEOの高額報酬批判など、行き過ぎた資本主義の弊害が叫ばれるようになった。また地球温暖化などの環境問題への懸念から、企業と「社会」との関係についても、CSR、ESG(そしてSDGs)と言うように、「社会の中で生かされている」という企業の社会的役割が強調されることになった。





思いっきり図式的に示せば、日本はより資本主義的な流れの方に向かい、一方米国では行き過ぎた資本主義への反省が出てきている、一見「逆の動き」をしているということです。





但し、米国も行き過ぎたものを若干巻き戻す程度の話であり、そもそもの資本主義の権化として企業の成長、利益といったものを疎かにするようなことはありません。SDGsに配慮するのも、持続的な「成長」を実現させるためであり、その点には注意が必要です。





人的資本開示についても、先行している欧米においてその目的は、従業員福祉といった倫理的、社会的ということがメインなのではなく、実は、企業の成長≒資本主義経済からの要請なのです。





すなわち、競争力やイノベーションの原動力である「人財」ということについて、今まであまり顧みられなかったという反省に立ち、投資家(株主)への開示という形で、株主資本主義の根っこである投資家の監視の下、売上や利益の改善を図ろうというのが主旨であり、同時に盛り上がりつつある社会性というものも取り込んだ形で推進しようという流れになっています。





株式市場という既にグローバル化が進んでいる中、「人的資本の開示」という投資家(株主)からの要請という点では欧米と全く同じ状況に置かれている日本企業において、「企業と従業員の関係」は今後どうなるのか?後篇で解説していきたいと考えています。





トップ写真:横断歩道を渡る社会人(イメージ) 出典:ooyoo/Getty Images




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