アメリカはいま――内政と外交・ワシントン最新報告 その12 保守とリベラルとの違いとは
Japan In-depth / 2023年6月8日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・トランプ政権とバイデン政権の違いから見える保守とリベラル。
・リベラルは弱い人や貧しい人に手厚く、社会福祉。企業に様々な規制を設ける。
・保守は中間層をターゲットに。企業に対する規制緩和や軍事予算の増加。
保守とリベラルの思考の違いについて話しを続けます。
では、実際の政策になるとどこが違ってくるかというと、リベラルは弱い人、貧しい人にとにかく手厚くしなければいけない、と主張する。だから、社会福祉をどんどん増やすのです。そこまではいいのだけれども、社会福祉というのはお金がかかります。このお金がどこから出てくるかというと政府の世話にはならないで黙って働いて税金を納めている中間層、あるいは、もっと上の髙所得層からガッポリ税金を取って貧しいほうに回していく。そうすると、何も政府の受益を得ていない人たちは、なんだ、ということになります。
ですから、トランプという人物がワッと出てきたのも、実は、この辺の中間層、中間よりもちょっと貧しい人、しかし政府の世話にならなければ生きていけないぞといっている人ほどは貧しくないという、この層にトランプ氏が訴えたわけです。というより、その種の層がトランプ氏の政策に期待をかけたのです。
企業に対しても保守とリベルの考え方は違う。
保守は、企業は自由にやってくれ、という。リベラルは規制をする。企業は放っておくとろくなことをしない、という前提があるといえます。
それから、貧富に格差が拡大するからこれをなんとかしなければいけない、これは保守主義よりもリベラルのほうが気にかけている、という感じがします。
この政策の違いのわかりやすい事例は多々あります。
トランプ大統領になったら、それまでのオバマ大統領がやっていた色々なかたちの規制をどんどんなくしたのです。規制緩和、規制撤廃です。リベラルというのは、上のほうの所得の多いところからがっぽり取って下に回す。保守は異なる方法をとる。企業に対する態度の相違も同様です。
トランプ大統領が就任直後にやったことは、企業にかかっている法人税がオバマ政権では35%だったのを一気に21%まで下げるという措置でした。ところがバイデン大統領が出てきて今度は29%と、30%近くまでまた上げた。これはわかりやすい保守とリベラルの違いです。
もう1つ、逆のことで、最低賃金制というのがあります。日本だと、いま1時間1,000円ぐらいでしょうか。アメリカは、トランプ政権のときは7ドル50セントです。そうすると、リベラル派というのは貧しいものの味方といっていますから、最低賃金をとにかく上げろ、上げろというわけです。しかし給料を払っている中小企業は反発をするわけです。バイデン政権になったら、7ドル50セントがいま連邦レベルでは15ドルです。2倍になっている。こういう違いがあるのです。
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