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日本の高齢化の2つの顔 ―少子化と長寿化―

Japan In-depth / 2023年6月8日 18時0分

今、まさに引退しようとしている世代にとって、この長寿化はある意味リスクでもある。何歳まで生きるか分からないのは昔も今も同じだが、長寿化によって、引退時期を後ずれさせなければ、寿命を全うするまでの期間を安心して過ごせないという不安がある。


例えば、1975年の平均寿命は、男71.37歳、女76.89歳だったが、その時、仮に55歳で引退すれば、余生は16~22年くらいの長さだ。2021年において同様の計算をすると、60歳の引退では余生の期間が5年間程度延びてしまう。その分、現役時代に貯蓄を増やすか、65歳まで引退時期をずらすかしないと、50年前と同じにはいかないことになる。


このように長寿化は、高齢層にとって、働き続ける、あるいは貯蓄を増強する誘因になっていると考えられる。それは、例えば会社勤務する者の60歳超のところでの大幅な給与カットと相まって、企業の総人件費に下押し圧力を加える。あるいは、高齢化が進んでいるのにさほど弱まらない貯蓄意欲の下で、国内の均衡金利を低位に止めるものでもある。つい先頃まで、平均的としてみた賃金がなかなか上がらない背後には、こういうこともあったのではないだろうか。ゼロ金利でも銀行預金が減らないのも同様だ。


 


■ これからいよいよ本格化する少子化の影響


平均寿命は、2021年に10年振りに前年を下回った。傾向としても、長寿化の勢いは鈍化している。これからの高齢化の影響は、いよいよ少子化による部分が大きくなっていくと思われる。それは当然、家族構成に影響を与える。1985年に一番多かったのは夫婦と子供の世帯で全体の40%だった。しかし、2015年には単身世帯が34.5%と一番多くなり、高齢者の単身世帯、ひとり親の世帯と合わせると、全体の6割以上が一人世帯となっている。


そうした家族構成の変化に伴い、一般的に現役世代にとって親の介護の負担が増していることは言うまでもない。そして、国の負担の面でも、社会保障制度の大きなウェイトを占める医療、介護、年金にかかる費用は、基本的に高齢者の人口増と並行して増加し、国費のさらなる投入が必要になり、財政赤字を増やしていく。65歳以上の人口が減少に転じるのは、今のところ2040年代と予想されており、それまで現在の傾向は変わらない。


付加価値を生み出す能力のある世代が、高齢者の補助にどんどん時間をとられていく社会になれば、経済活動の活性化という観点からはマイナスである。しかし、自分を育ててくれた世代のことを全く顧みない者が増えていくような社会も想像はしたくない。


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