日本の高齢化の2つの顔 ―少子化と長寿化―
Japan In-depth / 2023年6月8日 18時0分
さらに、社会的なコストという観点からは、地球環境の保全、国家の安全保障といった新たな分野でも当面費用が増えそうだ。そうした中で少子化の経済への影響をどう乗り切っていくか、高齢化先進国の日本は世界に先駆けてこの問題に直面する。
■ イノベーションとそのためのダイバーシティ
もちろん筆者に画期的なビジョンがある訳ではない。しかし、困った時は創意工夫に頼るというのが、いつの世も変わらぬ人の知恵のひとつだ。創意工夫とは要するにイノベーションである。そう考えると、現在進行している人工知能(AI)とロボティクスの発展を、どう社会課題の解決に役立てていくかが、日本にとって本当に大事だと思えてくる。
人手を補うという面では、すでに様々な機械が動いており、かつ人間との接触も可能な微細な動きができるロボットも誕生している。そうした機械群を、AIによって制御していくことで、増える高齢者のケアを、時間的な意味でも、金銭的な意味でも、いかに楽なものもできるかが、現役世代が元気に経済活動を続けていく上では非常に重要になる。
高齢者世代もまた、これからの社会の変化を自覚して、背負うことができる負担を背負う覚悟を持つ必要がありそうだ。誰しも、どう使われるのか分からない税金が増えるのは嫌だ。自分が大事だと思うことに、効果的に使われているとの実感がなければ、税負担の増加はなかなか受け入れられない。ざっくりした金額の議論で、効果があったのかなかったのかちゃんと説明できないような予算が組まれていたのでは、到底、負担増の理解を高齢者層から得ることはできない。
そういう観点からは、社会の意向集約のあり方をかなり根本的に見直す必要があるかもしれない。その上で、国の予算の作成、決定、執行の過程が、国民からもっとよくみえるようにしなければならない。このことは単なる「べき論」ではなく、これからの高齢化を乗り切るために必要な対応なのだという認識が重要だ。
そして、そのような広範な社会的イノベーションを実現していくためには、試行錯誤の上でダイバーシティがどうしても必要になる。多種多様であることによって初めて、これまでにない創造的な知恵が出てくる。したがって、個々の人権を尊重し、オープンにアイディアを集め、新しい社会環境にフィットした適所適材を社会として実現していかなければならない。そうした努力が、イノベーションの活性化を通じて、日本がこれからの高齢化社会を乗り切るための知恵を生み出してくれるのではないだろうか。
トップ写真:介護タクシーに高齢者を乗せる介護者(本記事と直接の関係はありません)
出典:iStock /kazuma seki/ Getty Images Plus
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