アメリカはいま――内政と外交・ワシントン最新報告その15 対中政策はなぜ変わったのか
Japan In-depth / 2023年6月12日 14時10分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・米の対中関与政策。民主的傾向が強まるのではないかとの期待は無残にはずれた。
・中国に対し超党派で警戒・抑止していく対中ワシントン・コンセンサスが語られるようになった。
・日本は「中国は脅威だ」と言っているだけではなく、何をするかが重要だ。
アメリカの歴代政権が中国に対して関与政策と呼ばれるソフトな姿勢をとったことには、もう1つ、大きな理由がありました。それは東西冷戦が続き、ソ連という一大脅威があり、中国はそのソ連と敵対関係にありましたから、その一方の中国を自分のほうにつけるというアメリカの思惑があったのです。
しかし、この関与政策は全くの間違いだった。なぜなら、中国は、アメリカが期待するような方向に全然動かなかったからです。中国のなかが豊かになれば民主的傾向がいくらか強まるのではないかという期待は無残にはずれた。
その一番の象徴例は習近平国家主席が、自分で、本来は5年ずつ2期だけと決まっていた任期を勝手に延ばして3期目……死ぬまででもできるようなことにしてしまった。これほど非民主的な動きはないじゃないか、というふうにアメリカ側は受け止めたわけです。いくら中国を助けても、中国は民主的な国にはならなかったのです。
この対中関与政策は間違いだったと断定され、新たに強固、強硬な中国への政策が形成されていきました。
アメリカが中国に対する態度を強固にした結果、具体的にはどういうことが起きたのか。
議会に初めて中国との対決――中国をどうするかということだけを専門に検討する特別委員会が今年の1月にできたのです。その委員会のタイトルも、「中国共産党に対する抑止」という。中国国民と共産党とは違うのだという見方をするのです。
その他、アメリカ側でのいまの流れを見ていくと、中国の経済をこれ以上に豊かにしてしまうようなアメリカ側の経済関与はやめておこう、という動きは始まっています。この動きはディカップリング、つまり切り離しです。しかしこれはそう簡単にはいかない。日本の実例を見ても、中国との取り引きによって利益を得ている自国経済の部分というのが大きいので、そう簡単に切り離しはできない。だがアメリカのほうがその流れは激しいのです。
中国との経済関係はできるだけ減らして、特に中国に依存する分野は減らす。いまもアメリカは医薬品などはかなり中国に依存していています。その依存を減らそうとする動きが非常に強くなって、実際の法律になり、TickTockなんて動画をばらまくような電子機具もアメリカ国内で全部禁止にするというような法案が議会に出ています。ただし、これはそう簡単には通りません。
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