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「マイナンバーカード・トラブル」①早い者勝ちマイナポイントで申請者が殺到し混乱

Japan In-depth / 2023年6月15日 23時0分

6月12日、衆院決算行政監視委員会で、岸田首相が答弁してトラブルの全体像や今後の課題が明らかになった。国会で立憲民主党の委員は「政府は、これまでどんな対策を講じて来たのか」と質問した。これに対し岸田首相は「マイナンバーカードはデジタル社会のパスポートであり、普及は重要だ。ご心配をかけて申し訳ない。再点検を指示している。」と述べた。





世界のデジタル化やキャッシュレス社会に、日本が後れを取っていることは明らかだ。マイナンバーカードの必要性は、国会の野党質問でも明らかなように大方の人が認めるだろう。





■ 普及率アップしたが、「マイナポイント」が「マイナスポイント」になった





政府は2015年に12桁の数字、マイナンバー(社会保障・税番号制度)を通知し、2016年1月からカードの交付が始まった。しかしなかなか普及が進まず、普及率が20%台にとどまった。





普及の推進策として2020年9月、マイナポイント事業が始まった。当初はカード登録で5,000円から、2次分で今年の2月末までに申請すれば、公金口座とマイナ保険証の登録で各7,500円計2万円分になった。





これが申請数の増加に一気に火を付けた。いわば早い者勝ちでアメをぶら下げたのがマイナポイントだ。





アメとムチの使い分け政策も取った。医療機関の外来窓口初診で、マイナ保険証はわずかながらの割引で、現在の保険証を利用するとわずかに診療費がアップする。





もっと前面に出したのが、普及率の低い自治体に対して地方交付税の算定に差をつけること。逆に上位の自治体は加算する。





東京や首都圏、関西など大都市圏に企業や人口が多く集まり、税収入も多い。地方交付税は、地方との税財源の不公平を平準化するために、政府が地方の財政需要に応じて配分する、いわば地方独自のかけがえのない自主財源だ。





それに差をつけるのは地方分権に対する圧力になる、と一部の知事や市町村長は反発したが、中小市町村の首長の中には、カードの登録支援出張サービス、独自のポイント制、特定の行政サービスをカード登録者に限定するなどで普及率に力を注いだ。財政難に苦しむ地方にとっては、背に腹は代えられない面もあっただろう。





その結果、カード取得普率はコロナ前の20%から77%にまで跳ね上がった。しかし反作用でトラブルが相次いでいるのは、現在の状態を見れば明らかだろう。





マイナポイントだけでも約2兆円の国家予算を費やした。今後、政府はシステムなどの修正・是正策には追加の巨額経費が掛かるだろう。金銭面だけでなく、失った信頼性など損失額は計算できない。





岸田内閣は広島サミットで好感度が上がったが、やや支持率が下がった。原因は親戚の官邸内忘年会など他にもあるが、マイナカードトラブルで約7~8割の国民が信頼性に疑問符を付けた。早い者勝ち「マイナポイント」で、申請者が増えて混乱したので、それが政権の「マイナスポイント」になった。





しかし後戻りはできない。本当に深刻なのは、マイナ保険証が来年秋までにトラブルが解決し、安心して使えるようになるのか、まだその先が見えにくいことだろう。





迷走解決に向けた政府の実行力が問われている。さらに詳しく、国民目線からも問題・課題を再点検したい。





(次回に続く)





トップ写真:マイナンバーカードと保険証の一体化について考えるシニア女性のイラスト 出典:ringo sono / Getty Images Plus




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