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みんな知らない 骨太すぎる「キシダノミクスと「3本の矢」【日本経済をターンアラウンドする!】その8

Japan In-depth / 2023年6月21日 23時0分

・求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を加工して集約し、共有して、キャリアコンサルタントが、その基礎的情報に基づき、働く方々のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制の整備等に取り組む


【出典】経済財政運営と改革の基本方針 2023 (案)


解雇規制については踏み込まなかった(踏み込めなかった)ものの、労働市場改革に踏み出した感がある。


 


■ 骨太の方針には3つのポイントがある。


第一に、「人的資本可視化」を岸田政権は進めている(骨太の方針には明確には書かれていないが)。人材育成をどのようにしていくのか、経営人事は今どのような状態なのかを上場企業は情報公開・可視化しなくてはいけないことになった。具体的には有価証券報告書への記載の義務付けである。


第二に、新卒一括採用、年功序列や終身雇用を支えたメンバーシップ型人事(様々職種を経験させるゼネラリスト育成)から専門性中心のジョブ(職能給)型人事への転換をさせていくこと。各人の役割が「ジョブディスクリプション(職務記述書)」によって規定された雇用形態に代わっていくのである。


第三に、旧態依然の産業にて雇用されている人たちに新しい技術や能力を身に着けてもらって(リ・スキリング)、成長分野に移ってもらうということ。


岸田政権は、この「3本の矢」を同時並行的に進めていくことによって、労働者を成長させ、労働生産性を上げ、企業経営を変え、収益改善をし、全体的に日本経済を成長させていくというシナリオなのだ。



図)筆者作成


 


■ 失われた30年を見直す、ほんとうの「改革」


確かに、政策の中身は30年前から論壇で言われていたこととそんな変わり映えがない。しかし、逆を言えば、やることはわかっていたのに長年手をつけられなかったということなのだ。その理由はさまざまであるし、ここでは詳しくは論じない。戦後日本経済社会の成功モデルの信奉者たち、危機感を感じていない利害関係者、目先の短期的な利益に猛進し自分は「勝ち逃げ」しようとする人たち、権限を手放さない権力者たちの考え方が支配的だったのか、世論も政府も企業も変われなかった・・・・のかもしれないが、本当のところはわからない。歴史的な背景や複合的な要因が絡んだ結果なのだろう。


しかし、先進国と比較して低い賃金、低い労働生産性、低い学ぶ意欲・モチベーション・・・。日本経済の病理の状況はより悪化している。1人あたりGDP(USドル)、平均賃金(USドル)、出生数、国民負担率を以下に示したが、本当に危機感を国民全員が共有するレベルといっても過言ではない。



表)筆者作成


そうした中、明らかになった骨太の方針。「骨太」という言葉を辞書で調べてみると、「骨が太い様子。骨組みが頑丈な様子」とある。そう、あくまで基本や根幹の方針なのである。


そして、ある意味、土台が崩れかけた今だからこそ、本当に求められているものなのかもしれない。今回の骨太の方針は、大きなアドバルーンをあげたりもしてないし、キャッチフレーズだけで中身のないものでもないし、目先の特定層へのばらまきのような経済政策でもない。未来の日本に必要な基盤になるようなことに着手しはじめたというのが特徴である。「日本経済の問題」解決のため、優先順位を明確にして、地道に政策を推進しようとしている岸田政権に期待したい。


(つづく。その1、その2、その3、その4、その5、その6、その7)


トップ写真:通勤する人々(本記事と直接的な関係はございません)


出典:ooyoo/ Getty Images Plus


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