金正恩体制の陰りを見せた朝鮮労働党総会
Japan In-depth / 2023年6月22日 18時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・朝鮮労働党の総会、金正恩氏の演説が無い異例なもの。
・軍事衛星の打ち上げ失敗を最も重大な欠点と指摘。
・更迭されていた呉秀容、金英哲が要職に復帰、現状打開に苦戦する状況。
朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会拡大会議が、2023年6月16日から18日まで、党中央委員会の本部で開かれた。
総会では、6つの議題が上程され、党中央委員会第8期第6回、第7回総会の決定実行のための2023年上半年度の経済部門をはじめとする各部門の活動状況を総括し、対策を立て、党の強化・発展と国家建設、変化した国際情勢に対処した国家外交および国防戦略に関する問題が討議された。
農業をはじめとした各分野で、成果を収めているとしたが、現実と乖離しているためか、すべて抽象的な表現にとどまった。党総会の目玉として想定していた「軍事衛星の発射」が失敗に終わったことが大きく影響したとみられる。
今回の党総会拡大会議にはいくつかの特徴が見られた。
それはまず、金正恩の演説がなかったことである。
2月の党総会からわずか3カ月での開催となったことも異例だが、それよりも異例なことは、党総会で金正恩総書記の演説がなかったことである。
軍事衛星の失敗と、その残骸が韓国軍によって引き上げられ、北朝鮮のICBM情報が、米韓に詳細に握られる可能性が出たことが影響したものと思われる。
朝鮮中央TVが映し出した映像を見ても、会議中ぶすっとして下を向くことが殆どで、ストレス、睡眠不足、多量の飲酒、ニコチン中毒などで健康悪化が取り沙汰されていることもあって、その表情にはむくみが目立ち、暗かった。また、体重が再び140Kg台にリバウンドし、心臓に負担をかけているのがありありと伺えた。
経済不振と飢餓の蔓延、そして米韓の強まる軍事圧力で、いま金正恩がいかに厳しい局面に立たされているかを示す会議の様子だった。
次に、軍事衛星打ち上げ失敗を最も重大な欠点と指摘したことだ。
今回の党総会拡大会議での注目点は、なんといっても軍事衛星打ち上げ失敗をどのように総括するかという点だったが、予想通り、党総会では、軍事衛星発射失敗を厳しく批判したと、朝鮮中央通信は次のように報道した。
「最も重大な欠点は、去る5月31日、宇宙開発部門で重大な戦略的事業である軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したことである。
第8回党大会が示した国防力発展の5大重点目標が全て重要であるが、その中でも軍事偵察衛星の開発はわが武力の発展展望と戦いの準備を徹底的に整える上で極めて大きな意義を持つ。
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