金正恩体制の陰りを見せた朝鮮労働党総会
Japan In-depth / 2023年6月22日 18時0分
衛星打ち上げの準備を責任を持って推進した活動家らの無責任さが辛辣(しんらつ)に批判されたし、当該部門の活動家と科学者が重大な使命感を肝に銘じて今回の打ち上げの失敗の原因と教訓を徹底的に分析し、早いうちに軍事偵察衛星を成功裏に打ち上げることで、人民軍の偵察情報能力を向上させ、宇宙開発分野でさらなる飛躍的発展を遂げるための近道をもたらすことに関する戦闘的課題が提示された」(2023・6・19朝鮮中央通信)。
軍事衛星の落下後に、北朝鮮の金与正党副部長は、6月4日の談話で「軍事偵察衛星の打ち上げなどは継続する」と新たな打ち上げを予告したが、次の打ち上げまでには相当の時間がかかると見られる。韓国情報当局は「技術面での欠陥は今なお解決できていない」とみている。
上記の情報筋は「墜落した発射体の技術面での欠陥を北朝鮮は完全に解決できず、再打ち上げができないため北朝鮮権力層内部で動揺が広がるなど、尋常でない雰囲気が感知されている」と伝えた。もしも、今後予想される再打ち上げに失敗すれば、間違いなく金正恩体制は大きく揺れ動くだろう。
3番目は、更迭されていた呉秀容、金英哲が復活したことである。
経済分野では、経済担当書記兼部長がまたもや交代し、昨年6月の党総会で党書記と経済部長を解任され更迭されていた呉秀容(オ・スヨン・79)が党書記兼経済部長で復活した。経済分野の不振を取り戻すための措置と見られる。
現在北朝鮮では、飢餓が平壌にまで広がっているが、この事態は、北朝鮮に親族を持つ在日朝鮮人からも確認された。しかし、この苦境を打開できる妙案もなく、人材も存在しないようだ。一旦更迭した幹部を再び呼び戻さなければならないほど、人材の枯渇に悩まされている状況が伺える。
そして、同じく、2021年の党大会で対韓国担当の書記を外され、統一戦線部長へ事実上降格され、昨年6月の党総会で、統一戦線部長のポストまで後輩にあたる李善権(リ・ソングォン)に譲り、同年9月には最高人民会議常任委員会委員も解任された対韓国強硬派の金英哲(キム・ヨンチョル)が、統一戦線部顧問として、政治局委員候補に復帰した。今後の対韓国強硬策を示すものとして注目される。
軍出身の金英哲は、偵察総局局長時代に韓国の天安艦撃沈を主導し、2013年にはソウルとワシントンを「火の海」にすると警告した強硬派だ。金英哲の復権は、対韓挑発のレベルを引き上げようとする動きと解釈され警戒されている。
今回の朝鮮労働党総会拡大会議で、北朝鮮は初めて「主観的・客観的形勢は不利であった」と現在の状況を総括したが、一言で言って、金正恩体制の陰りを見せた異例の党総会拡大会議であったと言える。
トップ写真:韓国で北朝鮮が軍事衛星を打ち上げる場面が放映される様子(韓国・ソウル 2023年5月31日)出典:Photo by Chung Sung-Jun/Getty Images
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