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東大剣道部合宿で得たもの

Japan In-depth / 2023年6月23日 13時50分

東大剣道部合宿で得たもの


上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)


「上昌広と福島県浜通り便り」





 


【まとめ】


・大学時代の経験が我々の人格形成に影響している。


・東大剣道部では稽古後、皆で酔い潰れる「愚行」に興じていた。


・「愚行」に興じていなければ、東日本大震災後、私が福島に関わることはなかった。


 


 福島県の復興をお手伝いし始めて、12年が経過した。随分と長いお付き合いになった。


関西出身の私が、初めて福島出身者と知り合ったのは大学時代だ。


在籍した東京大学運動会剣道部の故小沼宏至師範(警視庁剣道主席師範、当時)が会津出身だったからだ。お酒が強く、合宿や大会の打ち上げの際に、ほろ酔い加減の師範から「ならぬものはならぬものです」で有名な「什の掟」など福島の話を教えてもらった。歴史的な経緯もあり、江戸時代の藩校由来の学校が少ない阪神間に育った私には、武家社会の伝統についての小沼師範の話は新鮮だった。


私は、色んな意味で学生時代に、剣道をやっていてよかったと思っている。小沼師範を介して、福島を学んだことなど、大学の授業だけでは得られない様々な経験をしたからだ。本稿では、当時の状況をご紹介したい。


1980年代、東大剣道部は色んな名目で毎月4泊5日の合宿をしていた。8月は山中湖畔の「信玄道場」で、それ以外は東大本郷キャンパス内に位置する武道場の七徳堂で合宿した。七徳堂の合宿では朝は試合、昼は自由で、夕方は普通の稽古をする。稽古が終わると、本郷三丁目の焼き鳥屋「白糸」で酒を飲む。毎晩のようにイッキ飲みをして、大勢が酔い潰れる(写真)。店を出ると、「白糸」から七徳堂まで半裸で走ることもある。七徳堂に戻ると、4年生は部室、1〜3年生は道場に布団を敷いて寝る。合宿中に1回か2回、真夜中に1年生が叩き起こされ、「深夜稽古」となる。防具は付けるものの、やることは芸だ。受けなければ、ここでもイッキ飲みとなる。酔い潰れたら、同級生に面倒をみてもらう。



▲本郷キャンパスで合宿中の夜の光景。本郷三丁目にあった居酒屋「白糸」にて。左端が筆者。その横が一年下の藤井健志君。


筆者提供)


当時の東大剣道部は、毎日がこんな感じだった。1、2年生をしごくために、猛烈なかかり稽古をする新歓合宿、クビからゴミ袋をぶら下げて、幾ら吐いてもいいように準備する新歓コンパ。いつから、このような「愚行」が行われていたのかわからない。私が卒業してほどなく、このような行事は非合理的という理由で全てなくなった。


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