迷惑と懲罰のバランスについて 住みにくくなる日本 その5
Japan In-depth / 2023年7月1日 11時0分
「高校を中退した未成年者に、数千万もの賠償金を支払う能力があるだろうか」
などということは、関知するところではない。ならば親が支払うべきか、という話にもなりがちだが、民事裁判において親の監督責任が問われるのは、一般に子供が12歳未満の場合に限られているようだ。逆に、親が支払ったような場合も、形式的には被告から取り立てたことになるが。
いずれにせよ、くだんの少年は「人生終了」とまでは行かないにせよ、後悔先に立たず、では済まされない程の目に遭うのだろう。自業自得と言ってしまえばそれまでだが、私としては、撮影し拡散した人物がいるわけで、そちらにはなんのペナルティも科されないのは、やはり納得しかねる。
こうした意見を開陳すると、
「どうして加害者の人権にばかり目を向けるのか」
「海外だったら、もっと多額の請求がなされたはず」
といった反論にさらされがちなのだが、それこそまさに、私が問題にしたい点なのだ。とりわけ後者の論点について、そうである。
よく知られる通り、米国は訴訟社会で、中には(少なくとも日本人の感覚では)わけが分からない訴訟も提起される。
有名なのは、片田舎の婦人が、雨に濡れた猫を乾かしてあげようと、電子レンジに入れてチンした、と。もちろん猫は他界してしまった。すると夫人は激怒し、
「電子レンジのマニュアル(取扱説明書)に、猫をチンしてはいけない、と書かれていなかった」
として製造元を相手取り、巨額の賠償請求を求めた。
……実はこれ都市伝説で、そうした訴訟の記録はなく、PL法(製造物責任法)を揶揄したブラックジョークが、あたかも事実のように人口に膾炙したものと見る向きが多い。
ただ、マクドナルドのドライブスルーで受け取ったコーヒーを誤ってこぼした男性が、
「コーヒーが熱すぎたせいでやけどをした」
と訴え、賠償金を勝ち取った例は本当にある。
こうした訴訟社会そのものを皮肉った都市伝説もあって、
「米国のスーパーでは、入り口が濡れていてお婆さんが滑って転んだりしたら、セキュリティ(警備員)と名刺を持った弁護士が競争で駆け寄ってくる」
などと言われる。セキュリティが助け起こすよりも早く名刺を渡して、
「このスーパーを訴えるべきです」
とやればカネになる、というわけだ。
日本のネット社会に話を戻すと、最近はまた、家族ユーチューバーとか中学生インフルエンサーと呼ばれている人の動画が、物議を醸している。
3年前に、家族がスシローで食事をしている動画を上げたのだが(なにが面白いのだ?)、その背景に、当時2歳の男の子が、蓋の閉まった醤油差しを舐め回す場面が映り込んでいた。
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