ジョブ型で日本型雇用は転換する? 【日本経済をターンアラウンドする!】その9
Japan In-depth / 2023年7月4日 19時22分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・ジョブ型雇用が明確になった「骨太の方針」。
・ジョブ型で企業から労働者の論理へと視点がシフトする。
・過去に縛られていたら、企業は労働者に選ばれない。
岸田首相は6月16日「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2023)を打ち出し、閣議決定しました。岸田政権では「新しい資本主義」を掲げ、従来「コスト」と認識とされてきた賃金や設備・研究開発投資などを「未来への投資」と再認識し、人への投資や国内投資を促進する政策を展開している。
大手メディアは一部を除いて政策よりも、政局大好きで報道しないので、ここではその政策的意味を伝えていこうと思う。
骨太の方針の中のキーはやはり成長産業への移動といった労働市場改革がメインとされている。なかでも、ジョブ型雇用を明確にいったのは、ついに日本型雇用の転換点が来た、といっても過言ではない。
■ジョブ型とは何か?
【出典】筆者作成
ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義して人を採用し、仕事の成果で評価し、勤務地やポスト、報酬があらかじめ決まっている雇用形態のこと。簡単に言うとポストで人を雇う仕組みである。プロセスで分類すると
・職務:職務や勤務地が限定
・採用:新卒採用でなく、欠員補充時に募集
・雇用:完全に保障できない、職務給での雇用
・退職:退職勧奨あり
といった特徴がある(参考:筆者noteサイト)。
特に、大企業では、これまで「新卒一括採用・年功序列・終身雇用」といった雇用システム、いわゆる「メンバーシップ型」を採用してきた。しかし、メンバーシップ型は優位性があるどころか、企業経営にとっても問題であることが明らかになっている。
日本の高度成長を支えた新卒一括採用、ゼネラリスト育成、定期昇給、年功序列、終身雇用を特徴とするメンバーシップ型雇用がもたらす数々の問題を多くの日本企業は我慢できる限界を超えたと言える。
■ジョブ型の社会的意義:組織のためじゃなく、労働者のため?
そうした中、政府が問題の多い「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を明確に、強調したことは大変意義があることだと言える。もう大企業も変わらないといけないのだ。
メンバーシップ型は高度成長期の、日本型組織にとってうまくカイシャ共同体として機能した、労使にとってもしあわせな時代が生んだ「奇跡」のようなものなのだ。時代が作り上げた制度。それが成功の記憶が強すぎたのか、人事制度という安定基盤だからか、なかなか改革が進まなかった。今後の経済競争に勝ち残っていけない。
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