トランプ氏起訴のブーメラン効果?
Japan In-depth / 2023年7月5日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・トランプ前大統領、起訴されても国民の支持は上昇。
・トランプ氏の起訴は、バイデン政権の政治的な動機が強い。
・民主党側がかえって傷つくブーメラン現象も。
アメリカのドナルド・トランプ前大統領は6月8日、フロリダ州の連邦検察当局から機密文書の不当な保持などの罪状で起訴されたが、その後のアメリカ国民からの支持はかえって上昇したことが一連の世論調査で明らかとなった。
トランプ氏は今年4月のニューヨーク州の地方検事による起訴でも一般有権者の支持を大幅に高めた記録があり、この種の起訴の正当性が改めて広範な議論の的になる見通しも生まれてきた。
アメリカの多数の世論調査機関のなかでも最大手のラスムセン社はトランプ氏への一般国民の態度についてフロリダ州での起訴から1週間ほど後の6月中旬に実施した全米世論調査の結果を発表した。
この発表によると、アメリカ有権者のうち45%が今後の大統領選ではトランプ氏に投票すると答え、バイデン大統領に投票すると答えた人は全体の39%に留まった。
ラスムセン社はいまアメリカで唯一、大統領への支持率を毎日、調査して発表する作業を続けている機関で、そのこれまでの予測は他の多くの機関より正確だったという定評がある。
そのラスムセン社はこの5月ごろにはバイデン氏の支持率がトランプ氏とはほぼ並ぶか、あるいはわずかながらリードするという調査結果を発表してきた。だから6月中旬に発表された上記の最新の調査でのトランプ氏の6ポイントのリードは2回目の起訴の後にトランプ氏への支持が急速に高まったことを証している。
一方、ハーバード大学とハリス社の合同の世論調査でも、トランプ氏の2回目の起訴後の調査でトランプ氏45%、バイデン氏39%と、ラスムセン社と同じ数字の支持率が出た。さらに政治調査でよく知られるキニパック大学による同時期の世論調査でもトランプ氏が48%、バイデン氏が44%という全米での支持率結果が出た。
他方、バイデン政権自体はこの2回の起訴に対しては具体的な論評を避けながらも、「法律はすべての国民に均等に適用される」という一般論で起訴自体の合法性を認めている。
また民主党支持層はこのトランプ氏起訴を支持するという人たちが6割、7割という多数派を占めている。となると、民主党も共和党もとくに支持しないという無党派層、あるいはアメリカ国民全体という観点からの反応が重視されることになる。この点で参考になるのはやはり前記の全米調査でのトランプ氏、バイデン氏のどちらを支持するかの質問の結果だったといえよう。トランプ氏への支持率が上昇したのである。
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