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「マイナンバーカード・トラブル」④ 「持ち歩ける」電子カルテ

Japan In-depth / 2023年7月22日 11時0分

筆者もこの時期に厚生労働省担当の新聞記者として医療提供体制、患者の主体性の尊重、情報開示のテーマで不幸な医療事故の被害者や過剰診療に対する患者側の情報開示請求の努力などを取材してきた。


手術中の医療器具の身体内置き忘れや誤った器官・箇所の切除など明らかな医療ミスは責められるが、過酷な労働条件の中での医師の医療の技術水準を高める献身的な試み、患者の命を救うための超高度な医療行為と、その限界とのはざまで葛藤する努力には、本当に頭が下がる。患者側の要請に医療側も誠実に対応してきた。


筆者もセカンドオピニオンでは心労が積もった経験がある。日本を代表する私立大学付属病院に転院した時、前の病院のカルテを取り寄せてもらえるよう医師に依頼したが、患者の私のたっての同意・承諾があっても、なかなか実現しなかった。


結局、前の病院にその大学出身の医師がいて、何とか関係者を説得してもらって取り寄せた。前の病院の治療も良かったが、新たに大学病院の別の診療科医師からのサジェスチョンによる治療・投薬のおかげで回復した。入院は数か月にも及んだ。前の病院も真摯に対応していただいたが、共通する「持ち歩ける」電子カルテがあれば、もっと診療がスムーズに進んだだろうと思う。


医療DXは政府を含む医療・関係機関の徹底した情報保護管理、医師の承諾・患者との相互信頼関係などが大前提だろう。デジタル化の推進や制度の必要論を、野党も反対はしていない。しかし道のりは困難も抱えている。


改正マイナンバー法は保険証の廃止に関しては1年6カ月を超えないうちに施行すると定める。つまり来年の秋であるが、加藤勝信厚生労働相は閣議後の記者会見で、「最も遅い場合は2024年12月8日となる」との見解を示した。保険証の廃止後に発行する「資格確認書」について「マイナ保険証を持たない人を把握したうえで、すべての被保険者が必要な保険診療を受けられるよう適切に対応したい」と述べた。廃止日を決め、政令で示す方針だが、内閣支持率の低迷で政府の方針が揺らいでいるようにも見える。


マイナ保険証との一体化で、「持ち歩ける」電子カルテの実現など「デジタル社会へのパスポート」としての医療DXが加速するのか、或いは失速してかすんでしまうのか。カードの普及率を急ぎ過ぎた余りに、あえての有用論さえ憚られる現状を打開し、実現・信頼への道のりにどのように、つなげて行くのか、対応が問われる。


(⑤に続く。①、②、③)


トップ写真:イメージ 出典:Nikada/Getty Images


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