米中新冷戦とはー中国軍事研究の大御所が語る その4 アメリカはまだ準備不十分だ
Japan In-depth / 2023年7月24日 16時10分
――ではアメリカはこんごどうすればよいと考えますか。
「まさにその点こそが私のいまの研究の主題です。中国はすでにアメリカに対して新冷戦と呼ぶべき闘いを始めた。アメリカ側もその現実はわかってきた。しかし脅威への対応は脅威だという言葉を述べるだけでは意味がない。その脅威に対抗し、抑止するための行動が欠かせません。
その点でいまのアメリカはまだ中国の脅威に対する適切な対応ができていません。たとえば中国に投入されるアメリカの資本ですが、その資金が結果としてアメリカを攻撃するための軍事能力の強化にも使われる場合、好ましくないことは自明です。ところがいまのアメリカの連邦政府の財務省には中国への投資の内容をモニターする機能がないのです。
たとえばシリコンバレーから出発したアメリカのベンチャーキャピタルの『セコイア・キャピタル』がいまのグローバルな大成功の波に乗り、中国のどんな経済分野、軍事分野に投資をしても、中国ハイテク企業の成長に寄与しても、その結果、アメリカへの軍事脅威が増しても、アメリカ政府にはなんの規制の方法もありません。
中国にすでに巨額の投資をして、現地での生産を始めたアメリカ企業のなかには多様な理由により撤退したいと考えているところも少なくないようです。しかし現状ではその撤退が非常に難しい仕組みになっています。
要するにアメリカ側は中国との新冷戦にのぞむ国家としての構えができていないのです。この状況はソ連との東西冷戦に直面した当初のアメリカの状況に似ています。第二次大戦後の1947年ごろにはソ連が新たな脅威になることが明白となりました。しかもアメリカの国家の根幹を崩しうる重大な脅威です。
ソ連との冷戦の始まりでした。しかし当時のアメリカ側にはその闘いに対処する国家のメカニズムが整っていなかった。国家安全保障会議がなかった。中央情報局がなかった。空軍という独立した軍事部門がなかった。いずれもアメリカ国民の恐怖に押される形で急いで設置されました。いまのアメリカはそのときの状況に似ており、新たな対中冷戦への国家の再構築が必要なのです」
(その5につづく。その1,その2,その3)
*この連載は月刊雑誌「正論」8月号掲載のインタビュー記事「米国の過ちは抗議だけで対中政策を変えなかったこと」の転載です。
トップ写真:TechCrunch Disrupt SF 2018に登壇する セコイヤ・キャピタルのパートナー、ロエロフ・ボサ氏 2018年9月7日 米国サンフランシスコ
出典:Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch
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