公から姿を消した秦剛外相
Japan In-depth / 2023年7月28日 11時0分
澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)
【まとめ】
・中国の秦剛国務委員兼外相が公の場所に姿を現していない。
・背景に、王毅と秦剛の対立か。
・女性スキャンダルやロケット軍「クーデター」への関与も取り沙汰。
今年(2023年)6月25日から今に至るまで、中国の秦剛国務委員兼外相が公の場所に姿を現していない(a)。外相としては極めて異例だろう。秦剛が最後に公の場に姿を現したのは6月25日で、スリランカ、ロシア、ベトナムの高官と会談した時である。
実は、秦剛外相は近くジョセップ・ボレリEU上級代表(外務・安全保障政策責任者)と会談する予定(b)だった。だが、7月5日、北京は何の説明もなく突然、ボレリ代表の訪中を一方的にキャンセルした。
7月7日、中国外務省の汪文斌報道官は、記者会見で秦剛外相に健康上の問題はないかと質問されたが、具体的に答えなかった。
ここで、秦剛の失踪理由を考えてみたい。
第1に、もしかして、秦剛の“ロケット昇進”と何か関係があるのかもしれない。
王毅前外相は2013年3月に外相に就任し、2018年に国務委員を兼任している。国務委員へ昇格するまで5年かかった。一方、秦剛は外相就任後、わずか3ヵ月で国務委員を兼務している。
第2に、王毅と秦剛の対立である。
最近、王毅と秦剛は、それぞれ中央外事弁公室主任と外務大臣というポストに昇進した。王毅の主戦場はロシアと欧州で、秦剛のそれは米国であり、役割分担は異なる。だが、2人の方向性は別だと言われる。
他方、外相はしばしば年功や年齢ではなく、トップから信頼されているかどうかで決まる。その結果、新任の外相は弱く、能力も欠如しているという。
第3に、今年、中国は外交上のトラブルが頻発している。
①今年2月、米中間で「スパイ気球事件」が発生した。
②盧沙野駐仏大使と邢海明駐韓大使がそれぞれフランス・韓国と外交的対立を引き起こした。
③駐米大使の人選で王毅と秦剛の意見が異なった。
④秦剛は外交攻勢で、諸外国要人の中国訪問の機会を作ろうと目論んだが、ほとんど成功せず、習主席は孤独である。
⑤ブリンケン国務長官が訪中後、バイデン大統領は習主席を「独裁者」と呼び、主席が激怒した。
⑥秦剛は李強首相の訪欧を推進したが、首相の特別機への搭乗を認めない、記者の質問に答えさせない等の“格下げ”に習主席は納得がいかなかったという。
⑦ジョセップ・ボレルEU上級代表は中国に批判的な発言をしたため、訪中がキャンセルされた。
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