ワグネルとイスラム国(上)ロシア・ウクライナ戦争の影で その4
Japan In-depth / 2023年7月29日 11時0分
話を戻して、ワグネルについては「準軍事組織」「民間軍事会社」「傭兵」さらには「プーチンの私兵」といったように、様々な呼び方がなされ、報道も統一されていない。
これは無理もないと言うか、そもそも国際法上グレーゾーンの存在なので、的確な(つまり法的な定義の裏付けがある)呼称が存在しないのである。
順を追って見て行くと、まず傭兵というのは、金銭で雇われて戦闘を請け負う兵士たちのことで、その歴史は古い。『傭兵の二千年史』(菊地良生・著 講談社現代新書)という本を読むとよく分かるが、古代ギリシャ・ローマの時代より、ヨーロッパで起きた戦争や革命には、まず例外なく傭兵が関与していた。
と言うより、我々が軍隊の一般的な姿として思い浮かべる「国民軍」というものは、18世紀末に起きたフランス市民革命の後に初めて登場したもので、それ以前の軍隊とは王侯貴族の家臣団と傭兵から成るものであったのだ。
20世紀後半の冷戦期に、軍事の形態が複雑化すると、もっぱら戦闘を請け負う傭兵だけでなく、補給など後方支援、拠点の警備、要人の警護といった任務を請け負う企業が登場してきた。世に言う軍事のアウトソーシングである。
過去の傭兵は、退役軍人などのネットワークでもって、個別具体的な任務のために募集されたが、近年では組織的かつ継続的に行う企業が登場し、民間軍事会社と呼ばれている。
過去の傭兵募集が、日雇いなど短期雇用の労働力を集める「手配師」の仕事であったとすれば、顧客に代わって給与から社会保険料までを支払う「派遣会社」になったと思えばよい。両者の共通点は、はなはだしい金額をピンハネする事だが、その話はさておき。
準軍事組織と呼ばれるのは、正規軍ではないものの、豊富な資金力を背景に、装備など最新の物を揃えており、戦闘力では見劣りしないからだ。
最後に「プーチンの私兵」という呼称だが、これは、いささか複雑な背景がある。
まずロシアでは、民間軍事会社の設立が法的に認められていない。軍隊経験者が他国の紛争に介入した結果、面倒な問題に巻き込まれる事態を嫌ったからで、傭兵として活動したことが明るみに出た場合、懲役8年以下の刑に処せられるという規定まである。
つまりワグネルは超法規的な活動を行っていたことになるわけで、今年になって初めて、プーチン大統領自身が、過去のワグネルの活動について、ロシア政府の後押しがあったことを認めたくらいである。
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