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北京による民間企業への唐突なアピール

Japan In-depth / 2023年7月31日 11時29分

北京による民間企業への唐突なアピール


澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)





【まとめ】


・中国共産党と国務院、民間経済活性化11の文書発表。


・習政権、経済落ち込み食い止めようと必死。


・中国経済、習主席の「個人的嗜好」で衰退。


 


今年(2023年)7月19日、中国共産党中央委員会と国務院は民間経済を活性化するため11の文書を連続して発表(a)した。その内容の一部は以下の通りである。


中央政府は、民間企業が自主的に雇用を拡大し、賃金分配を改善することで、従業員が企業の発展成果を享受する水準を高める。また、民間企業が中部、西部、東北部の労働集約型製造業、設備製造業、エコ産業に投資することを支援する。


他方、政府は民間企業のカーボンニュートラル推進を支援する。また、炭素削減技術・サービスを提供し、再生可能エネルギー発電とエネルギー貯蔵のため投資を増やし、炭素排出権とエネルギー使用権取引の参加を支援する。


政府は民間企業がインフラ建設を全面的に参加することを支持し、民間資本が新都市、交通、水利などの大型プロジェクトや弱点を埋める分野の建設へ参加するよう指導する。


また、民間企業が自らの実情に基づき、積極的に核心部品やハイエンド製造品の設計・開発方面に進出することを支持し、ブランド構築を強化し、「メイド・イン・チャイナ」の評判を高める。


政府は民間企業が海外事業を拡大し、「一帯一路」建設に積極的に参加するよう奨励する。また、民間企業が海外プロジェクトへ参加し、現地の法規を遵守して社会的責任を果たすよう推奨する。


さて、これが専門家やネットユーザーの間で様々な議論を呼んでいる(b)。


今回、北京が文書を発表した背景には、(1)中国GDPのマイナス成長、(2)若者の失業率の高さ、(3)外資導入率の低さ、といった危機的状況から中国を救うためと考えられよう。習政権は、中国経済のこれ以上の落ち込みを何とか食い止めるようと必死になっている。


しかし、このような“付け焼き刃”的手法で、果たして中国経済が復活するのだろうか。


実は、中国経済が低迷していた2018年、習近平主席はすでに民間企業に関するフォーラムを開催し、民間企業の発展を揺るぎなく奨励・支援する必要性を強調した。


ところが、実際には、習政権はそれとは全く反対の毛沢東時代へと回帰している。すなわち「改革・開放」政策を放棄し、計画経済を導入し始めた。


独立評論家の蔡慎坤によれば、近年、中国の「国進民退」(国有セクターの伸長と民間セクターの後退)は、正常な市場経済を損ない、民間企業の利益を損ない、民間企業家の決意さえも揺るがしているという。


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