緩和策と適応策~地球温暖化、人口減少、財政赤字に共通な2つのアプローチ~
Japan In-depth / 2023年8月1日 10時45分
人口減少には、人手不足と需要減少という2つの面がある。お客さんが減るのと店員が減るのがうまくバランスしていれば、理屈からすると何も問題は起きない。しかし、ミクロの現場で、すべてがそううまく行くはずがない。事実、現状は人手不足が先行している。そこで適応策としては、デジタル化(DX)、ロボット化さらには外国人雇用などが考えられている。
こうした対応を、個別の政策ではなく、当面、避けることができない生産年齢人口の減少への適応策としてデザインしないと、全体としての最適性は担保できない。DX、移民と個別に考えるのではなく、人口減少の適応策として全体観を持ってみると、正解がみつけ易くなるところもあるだろう。
ところで、人口が減少すれば、需要も減少する点は、日本経済の成長率の実力の判断においても重要な意味がある。もちろん、生産性が改善すれば、人口が減るからと言って成長率が落ちるとは限らない。しかし、親の世代をみても分かると思うが、高齢化も並行して進行するので、一人当たりの消費ボリュームも減っていく。さらには、イノベーションは若い世代が起こすことの方が多いはずだ。そうしたことを考え合わせ、最善の努力の結果として、どの程度、経済全体として成長することができるのか。適応策として金融・財政政策を考える上では、この視点も大事だ。
■財政赤字への対応
緩和策と適応策は、財政赤字への対応についても考えることができる。財政再建というのは、当然、緩和策だが、しかし、日本社会の現状からして、財政再建が直ちに実現するとは到底思えない。したがって、財政赤字を持続可能な状態に持っていくのには時間がかかることになる。その間、おかしなことにならないようにどうするかというのが、ここでの緩和策になる。
中央銀行が国債を買い続ければ良いのだから、緩和策は不要だというのが現代貨幣理論(MMT)などの立場だが、古今東西の歴史において、野放図な財政で長く栄えた王家、政権などない。長く将来世代の繁栄を祈るのであれば、緩和策はどうしても必要だ。ただ問題は、今回、いつまでにどれだけ財政赤字を減らせば良いかは、歴史が教えてくれないところにある。客観的な答えのない問いだけに、現役世代の常識が問われる。
いずれにせよ、日本の高水準の財政赤字は、当分なくならない。その当分の間をどう凌ぐかが適応策になる。それは逸に金融市場における円滑な国債消化を維持していくことに他ならない。そのためには、国債という金融商品に対する信認の維持と、それに対して金融市場が適切と考える価格が設定されることが大事だ。
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